【FFTCG】限られたカードプールのなかの最善を追求 ~「MASTERS2024」下関大会優勝者インタビュー~

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS 2024 1st season」下関大会で優勝した、ザワワさんのインタビューをお届けします。

◆はじめに
みなさん、こんにちは!
『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。

「MASTERS 2024」が始まって早くも1か月が経ち、「1st season」も折り返しとなりました。4月の締めくくりとなった下関大会は「秘められた希望」発売後では初となるL3構築での開催となり、大きく注目を集めたと思います。

L3構築が採用された公式トーナメントは昨年の「JAPAN CUP 2023」以来実に半年ぶり、その間にカードプールの半分以上が入れ替わっており、すべてのプレイヤーにとって未知の環境でしたが、そんななか優勝を果たしたのは昨年の日本代表として「世界選手権 2023」にも出場したザワワさんでした。

今回はみごと優勝を果たし、2年連続での日本代表に向け最初の一歩を踏み出したザワワさんにインタビューを行い、混沌のメタゲームを制した「雷単」についてお話をうかがいました。


◆混沌のL3環境を切り開いた「雷単」
――ザワワさん、「MASTERS 2024」下関大会優勝おめでとうございます。昨年の日本代表選手としての実力を見せる結果でしたね!

ザワワ:ありがとうございます。

――下関大会は「秘められた希望」環境では初のL3構築での大会でした。L3構築が採用された公式トーナメントは昨年の「JAPAN CUP 2023」が最後だったので、その間に2つのブースターパックが登場して使えるカードプールもガラリと変わり、多くのプレイヤーにとって未知の環境となった大会でしたが、ザワワさんは「雷単」を使いみごと優勝されています。今回はどういった経緯からこのデッキ選択をされたのでしょうか。

「雷単(「MASTERS 2024」下関大会優勝 フォーマット:L3構築)

カード番号 カード名 枚数
【メインデッキ】 
フォワード(25枚)
【21-093L】 《ザンデ》 3
【22-073L】 《アルティミシア》 2
【22-075H】 《イデア》 2
【22-077H】 《ガルーダ[III]》 2
【PR-156】 《ザックス》 2
【21-083H】 《エース》 3
【21-096R】 《ナイン》 3
【22-078C】 《サイス》 1
【21-081L】 《アーヴァイン》 3
【20-085C】 《アサシン》 1
【20-127L】 《神竜》 3
バックアップ(17枚)
【20-105C】 《リーブ》 3
【22-088C】 《リグディ》 1
【21-095C】 《トレイ》 3
【21-085H】 《ガストラ皇帝》 2
【20-098R】 《チャドリー》 2
【20-095C】 《裁縫師》 3
【22-080C】 《セルキー》 3
召喚獣(5枚) 
【20-103H】 《ラムウ》 2
【21-084H】 《オーディン》 3
モンスター(3枚) 
【22-085C】 《モススラッシャー》 3
【LBデッキ】
フォワード(8枚) 
【22-120H】 《クラウド》 2
【22-121R】 《ライトニング》 2
【22-122L】 《ティーダ》 1
【22-124H】 《リレルリラ》 3

 ザワワ:今回、下関大会に向けての調整で意識したのは「スタンダードとL3構築でのLimit Breakの強さの違い」についてでした。

現在、スタンダード環境での「Limit Break」の強さは、【22-120H】《クラウド》のように“引きに左右されず必ず使用できる”というLBカードの強みを活かして特定の脅威を除去しゲームペースを崩さずに戦える、いわばテンポ面での強さが評価されていると考えています。


これはカードプールが広く、メインデッキのポテンシャルを十分に発揮できるスタンダードだからこその強さです。

それに対して限定されたカードプールで戦うL3構築は、【22-113L】《モント・リオニス》や【22-122L】《ティーダ》のように、それ自体が脅威となるタイプのLBカードがより輝くフォーマットだと予想していました。


なかでもL3構築における【22-113L】《モント・リオニス》は、天敵となる【12-002H】《アマテラス》や【9-068H】《ドラゴン》がなく、ブレイクゾーン対策も限られることで、多くのプレイヤーが注目するだろうと考えていました。

そこで意識したのが、相手に「Limit Break」を自由に使わせないことでした。

――フォーマットの違いが「Limit Break」の強さの違いにつながるというのはおもしろい視点ですね。相手に「Limit Break」を自由に使わせないというのは具体的にどういうことだったのでしょう?

ザワワ:先ほど話したように「Limit Break」はシステムの特性上、引きに左右されることなく使うことができます。そしてL3構築ではLBカードのオートアビリティを妨害することもできません。そこで考えたのが、【22-122L】《ティーダ》であれば相手のフォワードを取りこぼさず除去する、【22-113L】《モント・リオニス》であれば事前にブレイクゾーンから脅威となるフォワードを除外するといったように、アビリティを発動するための条件を妨害してカードを使いにくくさせるというアプローチでした。

――つまり、除去とブレイクゾーン対策に優れたデッキを模索していったと。

ザワワ:はい。まずL3構築でブレイクゾーンを除外できる手段のうち、実用的だと考えたのが【20-007L】《鬼神》、【20-057L】《女神》【21-081L】《アーヴァイン》【21-085H】《ガストラ皇帝》の4種類でした。


これを前提にカードプールを見ていくと、火属性と雷属性はレジェンドカードを中心にカードパワーが高く、火属性は【20-003H】《イフリート》や
【20-020C】《モンブラン》、雷属性は【21-093L】《ザンデ》の存在により、単属性でデッキを組んでも十分なポテンシャルがあるんじゃないかと感じました。なので、この段階で「火単」か「雷単」を使うことはかなりイメージしていました


――風属性も【22-116L】《エース》という強力なLBカードがあり、単属性デッキとして悪くない選択肢に感じますが、そこまで魅力的ではなかったのでしょうか?

ザワワ:ブレイクゾーン対策としての【20-057L】《女神》はどうしても大振りなカードなうえ、L3構築ではキャストギミックの役者がどうしても足りず、単属性でまとめるメリットが【22-116L】《エース》以外にあまりない印象でした。

――なるほど。では火属性と雷属性を比べ、雷属性を選んだのはどういった理由からでしょうか?

ザワワ:わかりやすく強い印象があったのは火属性でした。そのため下関大会では「火単」を選択するプレイヤーが多くなることが予想されました。また「火単」を使うということは【22-113L】《モント・リオニス》を使うということで、ブレイクゾーン対策に隙を見せることになります。この2点から、ミラーマッチが起こりやすく明確な対策手段が存在する「火単」を使うより、少しずらして「雷単」を使うほうが戦いやすくなるんじゃないかというのが「雷単」を選択した理由です。

――ブレイクゾーン対策を意識するという点では、【22-079L】《サイファー》・【22-084R】《風神》・【22-087R】《雷神》といった【カテゴリ(VIII)】のパッケージも採用されていませんね。

ザワワ:そうですね。そこもブレイクゾーン対策に引っかかりやすい要素なので。ブレイクゾーン対策の要となる【21-081L】《アーヴァイン》とそのサーチ元である【22-075H】《イデア》、スペシャルアビリティが強力な【22-073L】《アルティミシア》は採用していましたが、デッキ全体を寄せるのは避けようと考えていました。


実際、大会中も【22-075H】《イデア》はブレイクゾーンを十分にためて-8000することより、-4000でけん制しつつコンバットをフォローするという使い方が多かったですし、【22-073L】《アルティミシア》に至っては使うタイミングがなかったので、採用を見送ってもよかったかもしれません。

――【カテゴリ(VIII)】に寄せない代わりに、【ジョブ(クラスゼロ)】のパッケージを採用したという感じでしょうか?

ザワワ:はい。なかでも注目したのが【21-083H】《エース》と【21-096R】《ナイン》の2枚です。この2枚はフィールドに残るほど強いカードなのですが、L3構築のプールではこういったカードがあまり多くないため、このカードが使えることも「雷単」のメリットになると考えて採用しました。


ただ、安定してサーチできるわけではないので、ここに傾倒しきるのではなく、デッキの一要素として考えていました。

――【22-078C】《サイス》が1枚採用なのもそういった背景からですね。

ザワワ:そうですね。【21-095C】《トレイ》の回収の候補として1枚あると便利かな、くらいの感覚です。


――「秘められた希望」の新カードからは【22-077H】《ガルーダ [III]》と【22-085C】《モススラッシャー》も採用されていますね。

ザワワ:【22-077H】《ガルーダ [III]》は【21-121L】《ウォーリアオブライト》などを使ったデッキを対処するうえで有効だろうと考え採用しています。もちろん単純にフォワード1体を対処できるだけでも価値がありますし、使い勝手のいいフォワードとして重宝しました。


【22-085C】《モススラッシャー》については、【21-093L】《ザンデ》を使う都合上、場持ちのいいキャラクターを探す過程で見つけたのですが、相手ターンに処理されないフォワードになれるというモンスターならではの強みも持っており、特に対「火単」ではもっとも優先してキャストしたいカードでした。


「火単」で【22-085C】《モススラッシャー》を除去できる手段は【20-003H】《イフリート》か【21-012H】《バハムート》のどちらかになるのですが、コストの軽い【20-003H】《イフリート》では【22-085C】《モススラッシャー》を対処できず、【21-012H】《バハムート》はコスト交換上相手が損するので、相手の視点からするとかなり対処しにくいカードです。実際、下関大会は「火単」とのマッチアップが多い環境で、使うほど活躍してくれる1枚でした。

――「秘められた希望」のカードではありませんが、【PR-156】《ザックス》も新しいカードですね。

ザワワ:このカードは【21-096R】《ナイン》との相性のよさを考慮して採用しています。相手のブロッカーを2体無力化しながらフォワード1体を除去できるのはかなり魅力的でした。このカードは大会ギリギリになって採用したのですが、判断は間違っていなかったと思わせる活躍をしてくれましたね。

――1枚採用の【20-085C】《アサシン》は、具体的な仮想敵があっての採用ですか?

ザワワ:「雷単」はコスト5以上のフォワードを対処する手段に乏しいのがネックなのですが、【20-085C】《アサシン》はコスト5以上のフォワードを単体で除去できるカードなので1枚採用してみました。ただ、このカードに関しては狙ったとおりの活躍を見せてはくれなかったので、次があるなら採用は見送ると思います。

――光属性のスロットには【20-127L】《神竜》が採用されていますね。

ザワワ:このカードはアグロ気味に構築された「闇の戦士」デッキを重く見て採用しています。もともと「雷単」は【22-067L】《ナハト》への対処が難しいのですが、【22-067L】《ナハト》+何かのフォワードを展開してくる「闇の戦士」デッキであれば【20-127L】《神竜》を軽いコストでキャストするチャンスが多くなります。逆にある程度バックアップを伸ばすタイプの「闇の戦士」デッキは【21-093L】《ザンデ》などが間に合うようになるので、そちらで戦うプランをとることも多いです。


――LBデッキはL3構築の「雷単」ならこれで固定という印象ですね。

ザワワ:ですね。1枠余ったので採用した【22-122L】《ティーダ》も(LBコストに使って)水属性のLBカードが見えることで【20-106R】《アルフィノ》がちらついてくれればラッキー」くらいの気持ちでした。【22-120H】《クラウド》の強さは言わずもがなですし。

あ、そういえば【20-103H】《ラムウ》は【PR-156】《ザックス》と相性がいいという理由で採用したんですが、【22-121R】《ライトニング》で【20-103H】《ラムウ》を拾いつつ、ヘイスト付与と相手のフォワードをダルにしてリーサルを狙う動きはけっこう強かったです。


――「雷単」は【21-084H】《オーディン》も強いですし、【22-121R】《ライトニング》はスタンダード以上に活躍してくれそうですね。

ザワワ:実際、召喚獣が強くて相手ターンに干渉する手段が豊富というのも「雷単」のメリットだと思います。

――バックアップには【20-095C】《裁縫師》や【22-080C】《セルキー》など単属性デッキで使いやすい【ジョブ(一般兵)】がそろっていますね。「火単」もそうですが、今環境で単属性デッキが強いのには足回りのよさというところもあると思います。


ザワワ:はい。加えて「雷単」は【20-105C】《リーブ》によるバックアップへのアクセスや、【20-098R】《チャドリー》や【21-085H】《ガストラ皇帝》によるフォワード回収など中盤以降の継戦能力を維持してくれるカードの存在が大きいですね。


――たしかにこうしてみると、【22-088C】《リグディ》も含め回収手段が豊富ですね。

ザワワ:特に【21-085H】《ガストラ皇帝》は最初に話したブレイクゾーン対策としても重要なカードなので、狙いどおりの活躍をしてくれました。相手の行動に対してブレイクゾーンを除外できるのはほかの対策手段にない強みです、基本的に「火単」に対しては、リーサル圏外かつ手札の除去で対処できそうなターン以外はいつでも【21-085H】《ガストラ皇帝》をアクティブにしておくよう意識していました。

――こうしてお話を聞いてみると、「雷単」の対応幅の広さは環境随一かもしれませんね。次回L3構築で行われる京都大会以降はかなり使用率を伸ばすことになりそうです。ザワワさんは今後L3構築のトーナメントに出る予定はありますか?

ザワワ:出るとすれば6月の岡山大会ですがまだ定かではないので、しばらくはスタンダードに集中すると思います。

――では当面は「Standard Championship 2024」に向けて活動するという感じでしょうか?

ザワワ:そうですね。「Standard Championship 2024」は一発で「世界選手権2024」の権利を獲得できるチャンスですし、今年も日本代表になりたいのでがんばるつもりです。

――ありがとうございます。2年連続での出場目指してがんばってください!


◆おわりに
今回は「MASTERS 2024」下関大会を優勝したザワワさんへのインタビューでした。
昨年から調子を上げているザワワさんですが今環境も絶好調のようで、今年の活躍も期待できそうです。

この結果が今後のL3構築のメタゲームにどんな影響を与えていくかも注目ですね。

さて、ここから「MASTERS 2024 1st season」も後半戦です。スタンダード、L3構築ともに目が離せません。
今後も環境の最前線をお届けしていきたいと思いますので、ぜひお楽しみに!

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!