『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は前環境で活躍したデッキが「秘められた希望」の登場でどのような変化を遂げるのか、を考察します。
◆はじめに
みなさんこんにちは! 『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。
ブースターパック「秘められた希望」が発売され、1週間が経ちました。
みなさん、新ギミックの「Limit Break」(LBカード)をはじめとした新カードを使って、思い思いのデッキを試しているかと思います。
個人的にLBについていま思っていることは、これまでに使っていない領域のカードが新たに登場したので、ここぞというときに使うのを忘れてしまう可能性があるということです。まだまだシーズン前の練習段階ではあるのですが、トーナメントでは致命的なミスになりかねないので、今のうちにしっかり遊んで、LBデッキのカードを使えるということを体に慣らしておきたいところです。
さて、今回はこれまでのトーナメントシーンで活躍してきたデッキが、「秘められた希望」の新カードによってどのようにアップデートされるのかを考察していこうと思います。
4月から開催される「MASTERS 2024」初期の環境で目にすることも多いであろうデッキたちが、新セットでどのように変化するのか、見ていきましょう。
◆「運命を超えて」環境のデッキはどう変わる?
前環境で活躍したデッキの考察として、今回は「第五期 名人戦」シーズンで特に活躍の多く見られたデッキ7つについて考察していきたいと思います。
★「風単」
五代目“FFTCG名人”eurekaさんが使用し、「第五期名人位決定戦」を制した「風単」ですが、「秘められた希望」ではどういった影響を受けるのでしょうか?
まず考えられるのは、新たな全体除去手段となるLBカード【22-116L】《エース》の登場です。「風単」はキャラクターの展開を得意とするデッキなので、フィールドに出たとき自分の風属性のキャラクター数×1000ダメージを与える【22-116L】《エース》で簡単に大ダメージを与えることができます。
もちろんこれが強力なことは間違いないのですが、キャスト軸の「風単」にはもともと【17-063R】《ルッソ》による全体除去があるので、そこまで大きなアップデートではないと感じます。
キャストギミックにまつわるカードとしては新戦力として【22-047L】《ドルガン》・【22-048H】《ナナー・ミーゴ》が挙げられそうです。
【22-047L】《ドルガン》はフィールドに出たとき3つのモードから1つを選択するオートアビリティを持っていて、3枚以上カードをキャストしていればモードを最大2つ選択できるようになります。選択できるモードは「コスト5以上のフォワード1体を選ぶ。それをゲームから除外する。」「モンスター1体を選ぶ。それをゲームから除外する。」「ブレイクゾーンにあるカード2枚を選ぶ。それらをゲームから除外する。カードを1枚引く。」というもので、除外領域に送ることで再利用を封じられるのが【22-047L】《ドルガン》の独自の魅力です。
【22-048H】《ナナー・ミーゴ》もフィールドに出たとき状況に応じて使い分けられるオートアビリティを持っています。選択できるモードは「対戦相手のブレイクゾーンにあるコスト2以下のフォワード1枚を選ぶ。それをあなたのフィールドに出す。」「対戦相手のブレイクゾーンにあるコスト3以下の召喚獣1枚を選ぶ。それをコストを支払わずキャストする。キャストした場合、それはブレイクゾーンに置かれる代わりにゲームから除外される。」の2つで、どちらも対戦相手のブレイクゾーンに干渉する効果となっています。
特に2つ目のモードは1枚で2回のキャストを稼ぎながら、相手のブレイクゾーンの召喚獣を除外できるので、「風単」同士のミラーマッチや「土水」などの召喚獣コントロールデッキに対してかなり活躍することが予想されます。
また「風単」は今環境で活躍が予想される【22-122L】《ティーダ》に対して【16-058R】《フィーナ》という回答を持てるという点でも相対的に評価が高くなると考えています。
LBカードはメインデッキのカードと異なり再利用ができず、使える回数が制限されているため一度オートアビリティを無効にしてしまえば、そのゲームで使われる可能性はぐっと低くなります。LBに対して【12-002H】《アマテラス》や【16-058R】《フィーナ》といったカードが有効なのは言うまでもありませんが、【22-122L】《ティーダ》はゲーム中盤以降に登場するため【16-058R】《フィーナ》での対処が十分に間に合うので、コストをかけずに無効化できる【16-058R】《フィーナ》が最適な対策カードだと考えられます。
また【22-122L】《ティーダ》のアビリティは、フィールドに与える影響を無視して結果だけを見ると「こちらのデッキが2枚増えて、対戦相手のデッキが2枚減った」とも解釈できます。これはこれまで「風単」の負けパターンの1つであった「ゲーム展開上は有利だが山札がなくなって負けてしまう」という展開の抑制にもつながるので、マッチアップによってはそもそも【22-122L】《ティーダ》を対策する必要がない可能性も考えられます。
「風単」はリソースを生み出す力が高く、「Limit Break」によって使えるリソースが増えた現在の『FFTCG』でも十分に通じると考えられるため、今環境でも引き続き活躍が期待できるデッキとなりそうです。
★「火土水【光の戦士】」
「運命を超えて」環境で特に人気を集めた「火土水【光の戦士】」はどんな変化があるのでしょうか。
やはりLBカードの追加は大きな収穫と言えるでしょう。
このあと紹介するデッキにも共通していることですが、土属性と水属性は特にLBカードの恩恵が大きな属性です。土属性は【1-107L】《シャントット》や【11-072R】《デシ》で好きな属性なCPを生み出せるので【22-113L】《モント・リオニス》や【22-116L】《エース》などのデッキの属性を縛るものを除けばほぼすべてのLBカードが選択肢になるという強みがあり、水属性にはLBのなかでも最強格のポテンシャルを誇る【22-122L】《ティーダ》と、汎用性の高い【22-123R】《レオ》がいるので「秘められた希望」環境ではLBカードのポテンシャルがもっとも高い属性だと言えます。
水属性のLBを使えるというだけでは「火土水【光の戦士】」独自の強みとは言えませんが、「火土水【光の戦士】」は【19-102L】《レフィア》や【19-128L】《ウォーリアオブライト》でバックアップをアクティブにできるので、フォワードを展開して【22-122L】《ティーダ》のオートアビリティの条件を満たしながら【22-122L】《ティーダ》をキャストするリソースを確保できるというこのデッキならではのメリットが存在します。
LBカードの選択肢を広くとれる土属性と、LBカードそのもののポテンシャルが高い水属性を含み、キャラクター展開とリソース獲得に優れた【ジョブ(光の戦士)】のメリットが重なることで独自の強さを手にしたというのが今シーズンの「火土水【光の戦士】」の大きな武器となりそうです。
また【ジョブ(光の戦士)】としての強化要素としては【22-049H】《バッツ》にも注目したいところです。デッキから【ジョブ(光の戦士)】をサーチしフィールドに出せるスペシャルアビリティ「じくう」は、手札の《バッツ》が好きな【ジョブ(光の戦士)】となるようなもので、なによりバックアップもサーチ対象となるのでフィールドに特定のキャラクターをそろえる必要があるデッキの課題を大きく解決してくれるカードです。
【22-049H】《バッツ》は【12-099R】《セーラ [FFL]》1枚で(スペシャルアビリティの弾となる《バッツ》と合わせて)2枚集められるのでかなり狙いやすく、今後の【ジョブ(光の戦士)】デッキでは必須の動きのひとつとなるでしょう。 ただし、かなり風属性を濃く使う必要があるため、デッキ構築はこれまでのものから変化を求められることになりそうです。
★「火氷水ウォーリアオブライト」
デッキの性質上、採用するカードをコスト3に固める必要がある「火氷水ウォーリアオブライト」は「秘められた希望」でなにか変化があったのでしょうか?
メインデッキに採用するカードという点では【22-108H】《レナ》の追加はかなり影響が大きいと考えています。
【22-108H】《レナ》の持つ「レナがフィールドに出たとき、あなたのコントロールするキャラクターの属性が2つ以上の場合、カードを1枚引く。」「レナがフィールドに出たとき、あなたのコントロールするキャラクターの属性が4つ以上の場合、対戦相手は自分のコントロールするフォワード1体を選択する。それをブレイクゾーンに置く。」という2つのオートアビリティは、もともと採用されている属性の多い「火氷水ウォーリアオブライト」とは相性がいいものとなっています。
これまでは同名カードの【15-126R】《レナ》が採用されていましたが、序盤に【21-121L】《ウォーリアオブライト》から登場したときに活躍しにくい【15-126R】《レナ》と比べて、最低でも1ドローが保証されている【22-108H】《レナ》はかなり使いやすいため、今後は【22-108H】《レナ》を採用した構築にシフトしていくのではないかと考えられます。
また、LBカードによる恩恵もかなり大きいものになりそうです。メインデッキに水属性が採用されているので、【22-122L】《ティーダ》や【22-123R】《レオ》といった強力なLBカードが使えるのはもちろん、【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》を使う兼ね合いで全属性のカードを採用しているため、LBカードの選択肢はかなり広くなります。
「火土水【光の戦士】」と違い手札から雷属性をコストにしやすいため、【22-120H】《クラウド》などを即座にキャストできる瞬発力は「火氷水ウォーリアオブライト」の強みと言えるでしょう。
メインデッキのアップデートは多くないものの、LBカードの登場による恩恵も大きく、「秘められた希望」環境でも活躍の期待できるデッキとなりそうです。
★「風水モンスター」
「運命を超えて」環境終盤に頭角を現しはじめた「風水モンスター」ですが、「秘められた希望」環境では大幅な強化を得てトーナメントシーンでもかなり活躍の機会を増やすことになりそうです。
その要因となるのが、【22-122L】《ティーダ》と【22-106R】《ユウナ》の登場です。
これまで紹介してきたとおり、【22-122L】《ティーダ》は今環境で特に注目しているLBカードですが、「風水モンスター」は【22-106R】《ユウナ》で【22-122L】《ティーダ》をサポートすることでそのポテンシャルをさらに高く発揮させられます。
【22-106R】《ユウナ》は「ユウナがフィールドに出たとき、このターン、あなたが次に【カード名(ティーダ)】をキャストするためのコストは2減る(0にはならない)。」「あなたのフィールドに【カード名(ティーダ)】が出たとき、あなたのブレイクゾーンにある召喚獣1枚を選ぶ。それを手札に加える。このアビリティは1ターンに1度しか発動しない。」という2つのオートアビリティで《ティーダ》をサポートしてくれます。
この2つのアビリティによって【22-122L】《ティーダ》はキャストするコストを軽減しつつ、オートアビリティを使うためのコストを供給できるので、ほかのデッキに比べ圧倒的に使いやすくなります。
また「風水モンスター」にはもともと【21-133S】《ティーダ》が採用されており、【22-106R】《ユウナ》はこちらもサポートできるため、複数枚採用しても活躍の機会を逃してしまう心配もありません。
また【22-106R】《ユウナ》がキャストに関係するアビリティと召喚獣を回収するアビリティを持っているということで、風属性のキャストギミックを意識した構築を目指せるのも「秘められた希望」環境での「風水」の特徴になりそうです。前環境では採用されていなかった【17-063R】《ルッソ》の採用なども検討され、キャストデッキの新たな選択肢として活躍することになるかもしれません。
キャラクターの展開力が高い「風水」というデッキの特性も相まって、こと【22-122L】《ティーダ》を使うことにフォーカスしたデッキとしては、トップクラスの適正を持つ選択肢となりそうです。
★「火風土水ウォーリアオブライト」
根強い人気を誇る「火風土水ウォーリアオブライト」ですが、「秘められた希望」ではさらなる強化を受けることになりそうです。
まずLBによるアップデート要素ですが、これは「火土水【光の戦士】」同様、土属性と水属性のメリットを受けやすいという点で順当に強化されていると考えられます。そのうえで「火土水【光の戦士】」にはない「火風土水ウォーリアオブライト」ならではの強みとなるのが、メインデッキを強化してくれるカードの登場です。
「秘められた希望」では「火風土水ウォーリアオブライト」の細部を整えてくれるいぶし銀なカードが数多く登場しています。
例えば【22-108H】《レナ》と【22-103C】《ファリス》。【22-108H】《レナ》は「火氷水ウォーリアオブライト」でも紹介したとおりの非常に高いポテンシャルを持つフォワードで、4属性を使うことに特化した「火風土水ウォーリアオブライト」では「火氷水ウォーリアオブライト」以上に適正の高いカードですが、これまでの「火風土水ウォーリアオブライト」には【3-059H】《タイクーン王》からサーチしてくるバックアップの【21-119H】《レナ》が採用されていたので、そのままでは採用しにくいカードでした。しかし「秘められた希望」では同時に【3-059H】《タイクーン王》でサーチできるバックアップの【22-103C】《ファリス》が登場したため、この課題をクリアできるようになりました。
一見すると【22-103C】《ファリス》は【21-119H】《レナ》と比べバリューが低く感じられるかもしれませんが、【22-123R】《レオ》などと組み合わせ【12-110L】《ネオエクスデス》を対処できるなど「火風土水ウォーリアオブライト」が苦手としてきた序盤の押し付けへの回答になるカードで、かなり活躍が期待できます。
このように同名カードを自由に入れ替えられるのは、カード間のシナジーに依存している「火土水【光の戦士】」では取り入れにくい要素と言えるでしょう。ほかにも【22-065R】《ジークハルト》や【22-111L】《レーゲン》など、試しがいのあるカードが多く、今環境でかなり研究の進むデッキとなることは間違いないでしょう。
★「雷単カオスアーク」
多属性デッキ全盛だった前環境では、カウンターとしての【16-129L】《カオス》+【19-105H】《アーク》のコンボは非常に強力なアプロ―チのひとつでした。「雷単カオスアーク」はそのなかでも特に活躍したデッキでしたが、「秘められた希望」環境ではどういった活躍をするのでしょうか?
まず【16-129L】《カオス》+【19-105H】《アーク》のコンボについては引き続き活躍するとみていいと思います。理由としてはLBの登場により、今環境ではデッキに採用される属性の種類が増えると考えられるからです。特に研究が進む前の初期段階では、前環境同様高い優位性が認められるデッキになりそうです。
また【22-121R】《ライトニング》で召喚獣を回収しやすくなったことで、【6-086H】《アレシア・アルラシア》を絡めて【19-105H】《アーク》へのアクセスもよくなり、よりコンボ性能が向上した点もよい変化のひとつです。
デッキの伸びしろも大きく、LBカードには【22-120H】《クラウド》、通常のカードには【22-077H】《ガルーダ [III]》や【22-075H】《イデア》、【22-076R】《オーディン》などの強力な除去カードが登場しています。
「雷単」はこれまでもアグロデッキに対して有利な構造でしたが、LBによって除去を構えやすくなったことで、この相性関係はより強固なものになったと考えられます。
また全体除去のバリエーションとして新たに加わった【22-077H】《ガルーダ [III]》は、アンタッチャブル効果を持つカードに対しても対抗できるようになっています。従来の「雷単」以外にも【カテゴリ(VIII)】にフォーカスしたアグロ系の「雷単」なども考えられるので、戦い方のバリエーションという面でも大きく進化したデッキとなりそうです。
★「土水カオスアーク」
「雷単」同様、前環境では【16-129L】《カオス》+【19-105H】《アーク》のコンボが注目された「土水カオスアーク」ですが、今環境では【16-129L】《カオス》+【19-105H】《アーク》を採用しない、本来の構築に立ち戻るのではないかと考えています。
この考えの背景として、【22-122L】《ティーダ》の台頭によってバックアップに干渉できるカードのバリューが上がり、デッキスロットが【8-083C/1-117R】《ヘカトンケイル》のようなカードに替わっていくのではないかという予想があります。また、これまで話してきたように土属性と水属性の組み合わせはLBの恩恵を特に受けやすく、新たなフィニッシャーとして【22-122L】《ティーダ》を使える点も大きな強みです。
特に「土水」は【19-068R】《リディア》による【ジョブ(召喚士)】のギミックが採用できるため、「風水」同様【22-106R】《ユウナ》で【22-122L】《ティーダ》をサポートできます。
【10-068C】《クーシー》などを介さずとも直接【19-119L】《ウネ》をフィールドに戻せる【22-065R】《ジークハルト》や、強力なバックアップである【22-066C】《召喚士》の登場などでバックアップの重要度も上がっており、LBの台頭でアグロデッキがこれまでより勝ちにくくなる流れが予想されることから、ゲームレンジを後ろに倒しつつ、足回りを重視した構築にシフトしていくのではないかと考えられます。
◆おわりに
今回は「秘められた希望」の新カードが既存デッキに与える変化や影響にフォーカスし、前環境で特に活躍していた7つのデッキについて考察してきました。どのデッキも「秘められた希望」による強化をしっかりと受けており、今環境においても引き続き活躍することは間違いないでしょう。
こうした観点から「MASTERS 2024」の初期は、前環境のデッキをアップデートしたデッキが主流となるかもしれません。
また、今回は取り上げなかったデッキのなかにも新カードにより大きな変化を受けたデッキはまだまだあるので、それらのデッキも取りこぼすことなく研究したいところです。もちろん、「秘められた希望」で新たに生まれるデッキも考えられるため、最初の大会となる「MASTERS 2024 1st season」千葉大会はこれまでのシーズン開幕戦のなかでも屈指の混沌としたメタゲームの大会になるのではないでしょうか?
来週はより研究を深め、具体的なデッキの形で紹介していければと思いますのでお楽しみに!(本当に難しいので確約はしかねます!笑)
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!