【FFTCG】ブレイクゾーンに多属性カードを送ってやりたい放題!? ~「日本選手権2023 Autumn」さいたま大会優勝者インタビュー~

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「日本選手権2023 Autumn」さいたま大会で優勝したありかさんのインタビューをお届けします。

◆はじめに 
みなさん、こんにちは!
『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。

9月2日(土)、3日(日)に「世界選手権 2023」への出場権を懸けた大型トーナメント「L3 Championship 2023」が開催されるということで、最近の『FFTCG』公式記事連載ではL3構築を中心に「英雄の夜明け」環境の記事をお届けしてきましたが、今週はスタンダードについての記事をお届けします。

取り上げるのは、先日「英雄の夜明け」環境で初のスタンダードで開催された公式トーナメント「日本選手権 2023 Autumn」さいたま大会です。
この大会には僕も参加して、ようやく念願の「日本選手権 2023」本戦への出場権を獲得することができました。

今回は、そんな「日本選手権 2023 Autumn」さいたま大会で優勝したありかさんにインタビューを行ない、多くのプレイヤーに驚きを与えた「8属性コルネオ」についてお話をお聞きしました。

それでは、さっそく始めていきましょう。

 

◆多属性デッキは”全属性”の高みへ。「8属性コルネオ」
――「日本選手権 2023 Autumn」さいたま大会優勝おめでとうございます。
ありか:ありがとうございます。

――以前のインタビューで、次は優勝者としてインタビューさせてくださいとお話ししたのがつい先日のことでしたが、こんなに早く実現するとは。さすがの実力と言わざるをえませんね。

今回使用されたデッキは『FFTCG』に存在する8つの属性すべてを使用した「8属性コルネオ」ということで、「火土水【光の戦士】」に続き、多くのプレイヤーに衝撃を与えることになったかと思います。まずは、みなさんも気になっているデッキリストから見ていきましょう。 

 

●デッキリスト「8属性コルネオ」(「日本選手権 2023 Autumn」さいたま大会優勝 フォーマット:スタンダード) 

カード番号 カード名 枚数
フォワード(39枚)
【11-134S】 《ドン・コルネオ》 3
【14-023L】 《ギルガメッシュ [FFBE]》 3
【13-023R】 《シャルロット》 2
【17-091L】 《エクスデス》 3
【13-083H】 《リド》 1
【19-128L】 《ウォーリアオブライト》 3
【18-116L】 《セフィロス》 3
【14-122L】 《アルシド》 2
【14-124H】 《ゼロムス》 1
【12-112L】 《セルテウス》 3
【18-107L】 《アクスター》 3
【19-124L】 《ヤ・シュトラ》 3
【18-111L】 《バッシュ》 3
【19-110H】 《皇帝》 2
【13-112L】 《白虎のルシ ニンブス》 1
【19-103H】 《ティーダ》 1
【17-140S】 《ゴルベーザ》 2
バックアップ(11枚)
【18-014R】 《ミース》 3
【11-022C】 《イドラ》 3
【19-071C】 《エルゴ》 2
【11-072R】 《デシ》 3

――あらためて見ても、なんというか……すごいデッキですね。まずはこのデッキ、どういったコンセプトなのでしょう?

ありか:「8属性コルネオ」はデッキ名のとおり、キーカードである【11-134S】《ドン・コルネオ》の持つ「デッキのカードを上から15枚ブレイクゾーンに置く:フォワード1体を選ぶ。ドン・コルネオがフィールドにいる限り、あなたはそれのコントロールを得る。」というアクションアビリティを軸にブレイクゾーンを蓄え、【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》や【17-091L】《エクスデス》といったブレイクゾーンを参照する強力なフォワードを早いターンから最大限活用して勝利を目指すデッキです。

このデッキ自体は「悪夢より来たる」環境から愛用していたもので、「悪夢より来たる」で火・風・土・水の4属性を持つ【19-128L】《ウォーリアオブライト》が登場したことで、これと【18-116L】《セフィロス》か【14-122L】《アルシド》といった氷/雷属性のカード、そしてもう1枚光か闇属性のカードという、それらの最少3枚でブレイクゾーンに7属性以上をそろえられるようになり、【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》のアビリティの条件をぐっと達成しやすくなりました


光/闇属性のスロットには手札から能動的にブレイクゾーンに送りつつキーカードを回収できる【17-140S】《ゴルベーザ》と、ブレイクゾーンのカードをコストにしてフィールドに戻れる【19-103H】《ティーダ》を採用しています。


デッキの基盤となる動きは「火氷土雷」で固めつつ、【19-128L】《ウォーリアオブライト》・【19-103H】《ティーダ》・【17-140S】《ゴルベーザ》で残る属性を補完し、【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》のポテンシャルを最大限発揮しようというのがこのデッキのスタート地点となります。

また、もう1つの勝ち筋として【17-091L】《エクスデス》を採用しています。このカードは本来アビリティを発動させるための準備に時間のかかるカードですが、このデッキでは【11-134S】《ドン・コルネオ》のキャスト時に手札をコストにして1枚、【11-134S】《ドン・コルネオ》のアクションアビリティで15枚、手札をコストに【17-091L】《エクスデス》をキャストすることで2枚と、合計18枚のキャラクターカードをブレイクゾーンに送れるため、相手が1ターン目に2枚以上キャラクターをブレイクゾーンに置いていれば2ターン目には【17-091L】《エクスデス》の「あなたのターン終了時、ゲームから除外されているカードが20枚以上ある場合、対戦相手は自分のコントロールするキャラクター1体を選択する。それをゲームから除外する。」というオートアビリティを発動できます

この2つのプランをそのときの手札の状況や、余裕があれば相手のデッキ内容と相談しながら通していくというのがこのデッキの基本的な戦い方です。 なお【11-134S】《ドン・コルネオ》を1ターン目に出しても奪うフォワードがいないじゃないかと思われるかもしれませんが、【11-134S】《ドン・コルネオ》のアビリティは自分自身を選べるので、相手がフォワードをコントロールしていなくてもアクションアビリティを起動できます。

――【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》と【17-091L】《エクスデス》はどちらも条件の達成が困難なカードですが、それらの起爆剤として【11-134S】《ドン・コルネオ》を採用しているのはおもしろい着眼点ですね。【19-128L】《ウォーリアオブライト》をデッキの潤滑油として重くとらえているのは、前回インタビューさせていただいた「火土水【光の戦士】」にも通じるところがありますね。

かなり尖った構築に見えますが、採用されているカードを解説していただこうと思います。まず、先ほどのお話ではデッキの基盤となる動きを「火氷土雷」の4属性に任せているとのことでしたが、「8属性」というデッキを回すためにどういった基準でカードを採用していったのか、教えていただけますか。

ありか:このデッキはバックアップからCPを供給することをほとんど考えていないため、各属性のCPに困らないよう多属性のカードをできるだけ採用しています。その中でも特に重要となるのが【18-116L】《セフィロス》・【14-122L】《アルシド》・【14-124H】《ゼロムス》です。

――【19-128L】《ウォーリアオブライト》の対となる「氷雷」の要素を埋めるカードですね。それぞれ3枚、2枚、1枚という比率で採用していますが、これらの採用はどういった基準で行われたのでしょう?

ありか:このデッキの特徴として、攻めるプランはとても充実している反面、防御には大きな不安がありました。【18-116L】《セフィロス》はバックアタックと2つのオートアビリティによって単体で柔軟に相手の脅威を排除できるカードであり、相手の攻めをさばくためになくてはならないカードとして3枚採用しています

【14-122L】《アルシド》は【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》や【17-091L】《エクスデス》などのキーカードだけでなく、火氷・火雷・氷土などの氷か雷属性を含むフォワードをフィールドに送り込むための手段として大切な役割を持っています。ですが、必ずしもこのカードを経由しなければ出せないわけではないため、2枚採用に留まっています。

最後の【14-124H】《ゼロムス》については、「氷雷」には【18-117H】《ライトニング》などほかにも強力なフォワードの候補が存在しましたが、今回は【18-107L】《アクスター》との親和性を考えて【14-124H】《ゼロムス》を1枚だけ採用することにしました。

――少し話題に挙がりましたが、このデッキでは【18-107L】《アクスター》や【12-112L】《セルテウス》といった火/氷属性のカードも多く採用されていますね。

ありか:このデッキでは初手の【11-134S】《ドン・コルネオ》にアクセスする手段として【18-014R】《ミース》をキャストすることを重要視しており、そのために火属性のカードも多めに採用しています。

また、キーカードへのアクセス手段にとどまらず、【12-112L】《セルテウス》は戦力としての活躍も見込めます。ブレイクゾーンを肥やすことが得意なこのデッキにおいて【12-112L】《セルテウス》のオートアビリティの発動条件はとても使いやすく、また【12-112L】《セルテウス》はこのデッキで唯一【19-128L】《ウォーリアオブライト》をフィールドに出すことができるカードです。基本的にランダムな要素が強くなりがちなカードではあるものの、【11-134S】《ドン・コルネオ》で大量にブレイクゾーンを増やしてから使うため、そこを確認することで出てくるカードの予想が立てやすいのは、【12-112L】《セルテウス》を使ううえでほかのデッキにはないメリットかなと思います。まぁ、予想しても大体そのカードは出てきてくれないのですが(笑)。

もう1枚の【18-107L】《アクスター》は【18-116L】《セフィロス》と同様に、防御面がもろいこのデッキの除去を支えてくれるカードです。コスト3を参照するアビリティが【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》などと相性がいいのはもちろんですが、ダル凍結やダメージによって相手のフォワードを複数除去、足止めできるので、【18-107L】《アクスター》でフォワードを、【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》でバックアップをダル凍結させることで、多角的に相手を攻められる点が優秀でした。

先ほどの【14-124H】《ゼロムス》もそうですが、ほかにも【13-112L】《白虎のルシ ニンブス》などはこの【18-107L】《アクスター》との相性を考慮して採用したカードですね。

――ほかに3枚採用されているカードとしては【19-124L】《ヤ・シュトラ》と【18-111L】《バッシュ》などがあります。

ありか:【19-124L】《ヤ・シュトラ》自体の強さは今さら語るまでもないかと思いますが、先述の【18-107L】《アクスター》や【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》と組み合わせることでさらにバリューを発揮するカードでした。

特に【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》は1ターンに複数回ダメージを与えるカードなので、【19-124L】《ヤ・シュトラ》のアビリティも複数回誘発することになり、とても相性のいい組み合わせでした。また、【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》は単体で複数ダメージを稼いでゲームを決める性能は高いものの、今の『FFTCG』のカードパワーではさすがに【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》1体で詰め切ることが難しい場面も多いため、【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》でダメージを6点与えつつ、最後の1点を【19-124L】《ヤ・シュトラ》で決めるということもよくありました

 【18-111L】《バッシュ》はゲームの立ち上がりで【18-014R】《ミース》、詰めのタイミングでの【19-124L】《ヤ・シュトラ》など、ゲーム全体を通して活躍する汎用的なサーチ手段として採用しています。貴重な土属性のCPを確保できるカードでもあるため3枚採用としています。

このデッキではバックアップはEXバーストを持つカードで固められているため、能動的にダメージを受ける【19-124L】《ヤ・シュトラ》と【18-111L】《バッシュ》は手札を増やせる可能性があり見た目以上にバリューを発揮してくれるカードでした。

――サーチ能力だけでなくEXバーストを狙うことでさらにリソースを稼ぐ手段として運用するという考え方は、以前の「火土水【光の戦士】」に通じる使い方ですね。

ありか:はい。攻めに強く受けに弱いというこのデッキの構造上、どこかでEXバーストからリソースを供給して攻めきれるようにしておくということは重要なので、この点はかなり意識して構築しました。とはいえ多属性カードを採用する都合上、その役割はバックアップでまかなう必要があると考え、バックアップはEXバーストを持つものだけで固めています。

――初手のサーチ要員として【18-014R】《ミース》と【11-072R】《デシ》は強力ですが、【11-134S】《ドン・コルネオ》と【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》にアクセスできるという点では【6-022R】《イゼル》が採用されていても不思議ではないようにも感じます。

ありか:【6-022R】《イゼル》を不採用とした理由は、先ほどのEXバーストを重要視したことが1つと、【11-134S】《ドン・コルネオ》でブレイクゾーンを貯めた結果デッキに重要なカードが残らないことが多いからという点も考慮していますまた、カードへのアクセスをサーチに依存しすぎてしまうと、このデッキではゲームを決める前にデッキ切れを起こしてしまう可能性も高くなるため、【11-022C】《イドラ》でブレイクゾーンから回収できるようにしておいたほうがデッキの方向性と合っていると考えました。

ただ、同じくブレイクゾーンからの回収という意味合いで採用した【19-071C】《エルゴ》は、肝心の【11-134S】《ドン・コルネオ》や【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》、【17-091L】《エクスデス》を回収できなかったため、この枠には【20-105C】《リーブ》を採用したほうがよかったなと大会を終えて感じました。


――バックアップ以外で多属性ではないカードとしては【13-023R】《シャルロット》と【13-083H】《リド》が採用されていますが、これらの採用意図はどういったものでしょうか。

ありか:【13-023R】《シャルロット》は【11-134S】《ドン・コルネオ》とセットで出してコンボスタートを妨害させないというのはもちろんのこと、【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》や【17-091L】《エクスデス》を守っても強いカードです。また、氷属性のデッキに対しては相手のダル凍結をこのカードが一手に引き受けてくれるので大会中も活躍の機会が多く、3枚採用してもよかったと感じるカードでした。

 反対に【13-083H】《リド》は調整過程で枚数を減らしてきたカードです。というのもこのカード自体アドバンテージを生み出すカードではあるものの、肝心の【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》や【17-091L】《エクスデス》にはアクセスできずデッキの本筋の動きとは別軸のカードであるという欠点があるのです。もちろん強力なカードであることに変わりはありませんし、0枚にするほどではないのですが1枚あれば十分と判断し、この枚数に落ち着きました。

 

 

◆鋭い嗅覚で環境序盤のメタゲームを刺す
――実は、僕はこのデッキ自体は以前から知っていたのですが、やはりこのピーキーなデッキを大会に持ち込もうというのは勇気のいる選択にも感じます。

ありか:もともとこのデッキは「日本選手権 2023 Summer」シーズンの終盤に開催された諏訪大会で使用しようと考えていたのですが、参加できなかったので、供養を兼ねて今回使ったという意味合いが大きいです。なので、デッキリストを見てもらえればわかりますが「英雄の夜明け」のカードを1枚も使っていないんですよね(笑)。

――コンボデッキの宿命で、特定のカードを引けなかったり、【9-068H】《ドラゴン》のようなメタカードの存在もリスクになると思いますが、そういったことに対するケアなどは考えていたのでしょうか?

ありか:このデッキではもちろん【11-134S】《ドン・コルネオ》を引けることが重要ではあるのですが、万が一【11-134S】《ドン・コルネオ》もそれをサーチするカードも引けなかったとしても【19-128L】《ウォーリアオブライト》と【17-140S】《ゴルベーザ》を引けていればそのまま【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》のプランで走ることもできるため、必ずしも【11-134S】《ドン・コルネオ》を引けないからダメということはありません。

また【9-068H】《ドラゴン》をキャストされると苦しいのは間違いありませんが、【9-068H】《ドラゴン》自体は【11-134S】《ドン・コルネオ》を除去できるカードではないので、一度ブレイクゾーンを除外されても【11-134S】《ドン・コルネオ》さえ生き残ればもう1回チャンスを狙うことができます。採用されているカードが全体的にカードパワーの高い多属性カードでまとまっていることもあり、コンボに依存しきらずに戦えるという点でも力のあるデッキだと考えています。

タゲーム的な話をすると、環境が変わって【17-090R】《イクシオン》などが数を減らし、低コスト帯へのガードが緩んだと感じていたこともあり、このデッキを使うなら今だという思いもありました。ネタが割れてしまうと弱いデッキでもあるので、今回ここぞというタイミングで優勝できてよかったです。

――ありかさんは「火土水【光の戦士】」に続き「8属性コルネオ」と独創性の高いデッキで結果を出し続けており、個人的にいまや『FFTCG』界でも注目のデッキビルダーの1人だと思います。「L3 Championship 2023」など今後の大会での活躍にも期待したいところですね。

ありか:いや……実は「L3 Championship 2023」の申し込みを忘れてしまっていて、ご期待に沿えない可能性があるんですよね……(笑)。

――当日受付も実施されるとのアナウンスもあったので、できれば一緒に参加したいですね。とはいえ今シーズンは競技レベルの高い大会が多いので、そちらでの活躍に引き続き注目していきたいと思います。

ありか:僕自身はまずカードゲームは楽しいことが第一だと考えているので、そこはブレないよう楽しんでいければと思います。

――ありがとうございました。

◆おわりに
今回は「日本選手権 2023 Autumn」さいたま大会で優勝したありかさんの「8属性コルネオ」についてのお話をお聞きしました。
非常に独創性のあるデッキでありながら、環境初期の混沌としたメタゲームにフィットしたデッキ選択で優勝という結果を果たしたありかさんのセンスには、やはり目を見張るものがあります。これからどんな活躍をしていくのか注目のプレイヤーの1人と見て間違いないでしょう。

そしてここから始まるスタンダード環境もどういった変遷をたどるのか、その動向も引き続きチェックしていきたいと思います。

次回は掲載日の翌週に開催が迫った「L3 Championship 2023」に向けて、L3構築環境の最新注目デッキをピックアップしていきたいと思いますので、ぜひお楽しみに。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!