【FFTCG】最高のプレイと愛用のデッキで世界への道を切り拓く ~「Standard Championship 2024」優勝者インタビュー~

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「Standard Championship 2024」で優勝した豊田ファイサリスさんのインタビューをお届けします。

◆はじめに
皆さん、こんにちは!
『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。

6月29日、30日の2日間にわたって大阪にて「Standard Championship 2024」が開催されました。
今週はそこで優勝し、今年の日本代表プレイヤーの座に就いた大阪の古豪、豊田ファイサリスさんのインタビューをお届けします。
大阪の古豪、豊田ファイサリスさんは昨年の「Standard Championship 2023」でもベスト4に残った実力者であり、彼を2年連続での決勝ラウンドに導いた「氷雷」と、そして自身初となる「世界選手権2024」出場にかける想いについてお話をお聞きしました。

それでは、さっそく始めていきましょう!

 


◆昨年来の相棒「氷雷」ともに勝ち進んだ「Standard Championship 2024」
――豊田ファイサリスさん、「Standard Championship 2024」優勝、そして「世界選手権 2024」出場おめでとうございます。

豊田ファイサリス:ありがとうございます。いやあ、自分でも本当に幸運だったという感じですが、まずは嬉しいです。

――今回豊田ファイサリスさんが使用したデッキは「氷雷」でした。昨年の「Standard Championship 2023」でも「氷雷」を使用しベスト4に入賞していてそのときも僕の記事で『「氷雷」座談会』をさせていただきましたね。お名前に「ファイサリス」が入っていることからも氷属性へのこだわりがあるプレイヤーであることがうかがえますが、今回はどういった経緯から「氷雷」というデッキ選択に至ったのでしょうか?

豊田ファイサリス:今お話にあったように僕自身氷属性には思い入れがあって、「氷雷」も「Standard Championship 2023」以降1年間使い続けてきたこともあり、「Standard Championship 2024」には「氷雷」で出場しようと決めていました。

 

●「氷雷」(「Standard Championship 2024」優勝 (フォーマット:スタンダード)

カード番号 カード名 枚数
【メインデッキ】
フォワード(30枚)
【14-115L】 《神竜》 2
【19-019R】 《ヴィンセント》 2
【16-030L】 《シャントット》 3
【18-019R】 《ヴァイス》 3
【20-040L】 《ルーファウス》 3
【21-036H】 《ヤ・シュトラ》 2
【17-091L】 《エクスデス》 3
【22-077H】 《ガルーダ [III]》 2
【14-124H】 《ゼロムス》 2
【14-122L】 《アルシド》 3
【18-116L】 《セフィロス》 3
【16-124H】 《ライトニング》 2
バックアップ(15枚)
【18-028C】 《ネロ》 3
【16-041C】 《ユウナレスカ》 3
【11-133S】 《ケットシー》 1
【20-028R】 《シスネ》 1
【15-136S】 《プレジデント神羅》 2
【4-120R】 《レストリクター》 3
【9-098C】 《リーブ》 2
召喚獣(5枚)
【17-090R】 《イクシオン》 3
【18-084C】 《ラムウ》 2
【LBデッキ】
フォワード(8枚)
【22-114H】 《ヴィクトラ》 2
【22-115R】 《サージェス》 1
【22-120H】 《クラウド》 2
【22-121R】 《ライトニング》 2
【22-124H】 《リレルリラ》 1

――「秘められた希望」環境では僕も「氷雷」を使い続けてきましたが、豊田ファイサリスさんなら当然「氷雷」を選択してくるだろうと思っていました。1年間「氷雷」を使い使い続けてきたということですが、この1年は「氷雷」というデッキにとっても進化の1年だったと思います。それこそ1年前の「Standard Championship 2023」で豊田ファイサリスさんは今大会で準優勝のありかさんの「火土水【光の戦士】」に準決勝で敗れていましたが、このマッチアップの相性関係もかなり改善されています。豊田ファイサリスさん視点で、「氷雷」にはどんな変化がありましたか?

豊田ファイサリス:まず感じている変化として、環境的にダル・凍結の価値が以前より高くなったことで相対的に氷属性の重要度が増したということがあります。特に「秘められた希望」ではLBカードや「火氷水【騎士】」の【22-097L】《クリルラ》のようにフィールドに出たときに強力なオートアビリティを発揮するフォワードが多くなりました。これらのフォワードに試合中何度もオートアビリティを使わせないためフィールドに固定しつつ無力化させるうえでダル・凍結は非常に有効な対処手段です。昨年採用していなかった【14-124H】《ゼロムス》を採用しているのもそういった考えが色濃く反映された部分です。

――僕は最終的に【14-124H】《ゼロムス》の採用は見送りましたが、大会当日の朝ギリギリまで採用していたカードなので、かなり共感できるポイントですね。

豊田ファイサリス:また除去手段が豊富になったことも「氷雷」における大きな変化と言えるでしょう。
それこそ昨年の「Standard Championship 2023」では「火土水【光の戦士】」を相手に【19-102L】《レフィア》が対処できず完敗してしまいましたが、現在の「氷雷」は【22-077H】《ガルーダ [III]》や【22-120H】《クラウド》を始めとした豊富な除去手段が追加されています。 これら2点を総合して、相手の脅威に対して適切な方法で対処できるようになったことがこの1年で「氷雷」の得た大きな武器だと思っています。

――そんな豊田ファイサリスさんの「氷雷」ですが、同じ「氷雷」を選択した身として「なるほど」と思う点や逆に「?」が浮かぶ点もあります。優勝者に対しておこがましいと思われるかもしれませんが、そういったところにも突っ込んでインタビューしていこうと思います。

豊田ファイサリス:ぜひぜひ(笑)。

――まずバックアップの構成ですが、このバックアップの15枚は「氷雷」使いであれば「なるほど」と感じる構築の黄金比だと思います。僕の「氷雷」も同じ15枚で構成されています。

豊田ファイサリス:「秘められた希望」環境時点での「氷雷」のバックアップの15枚は、これになにか追加することはあっても減らすことはありえない15枚だと考えています。というのもバックアップの構成は「氷雷」というデッキの強みのひとつだと考えているからです。 「氷雷」のバックアップ構成が強いと考える根拠には、

・サーチ効果を持つバックアップがフォワードとバックアップの両方にアクセスできること
・EXバーストを持つバックアップが多いこと

という二つの要素があります。

まずめ一つめの要素についてですが、「氷雷」にはサーチ効果を持つバックアップとして【4-120R】《レストリクター》・【9-098C】《リーブ》・【15-136S】《プレジデント神羅》・【18-028C】《ネロ》の4種類が採用されていますがこのうち雷属性の2種類はどれもフォワードとバックアップにアクセスすることができます。これによりゲーム序盤はバックアップをサーチし足回りを補助しつつ、中盤以降はフォワードに変換することで、ゲームの序盤~中盤戦の展開をスムーズにつなげることができます「氷雷」というデッキはどちらかというと氷属性が主たる要素のデッキなのですが、この要素を持つカードが雷属性であることで、雷属性のカードからゲームをスタートした場合でもしっかりと氷属性の展開につながっているというのも強いポイントです。

またこれらのサーチ効果を持つバックアップすべてがEXバーストを持つカードなので、これがそのままふたつめの強みにもなっています。
デッキに必須となるバックアップがEXバーストを持つことで「氷雷」ではデッキを歪めることなく最低でも10枚のEXバーストが確保できます。これにより攻められる展開になってからもEXバーストからリカバリーしやすいのはもちろん、サーチ先のカードも序盤であればバックアップ、中盤以降であればフォワードという風にシーンに合わせた選択肢を選べるのも魅力です。

こういった強みを自然と発揮できるデッキは現環境で「氷雷」以外にはないと思っているので、この点は明確に「氷雷」がほかのデッキと比べて秀でいる要素だと思います。

ーーこれについては完全に同意です。次に召喚獣の選択ですが、僕の構築とは結構異なっている点です。召喚獣についてはどういった意図から採用したのでしょう?

豊田ファイサリス:今回採用したカードは【17-090R】《イクシオン》と【18-084C】《ラムウ》の2種類ですが、「火氷水【騎士】」とのマッチアップで重要な【17-090R】《イクシオン》は3枚、「火風土水【光の戦士】」で【19-102L】《レフィア》を対処できる【18-084C】《ラムウ》は2枚という比率で採用しています。

【17-090R】《イクシオン》については内心2枚でもいいかなという思いもあったものの、現環境で猛威を振るっている「火氷水【騎士】」に対してガードを下げたくないという思いから3枚採用にしていました。 【18-084C】《ラムウ》は【19-102L】《レフィア》への回答になるのはもちろん、オートアビリティを封じてくる【13-022H】《シド・ランデル》やミラーマッチで脅威となる【13-028L】《ファイサリス》のようなコスト5でパワー9000という「氷雷」では対処しにくいスタッツを持つフォワードに対する除去の役割も見込んで採用していました。 パワー9000のフォワードを除去するためにはブレイクゾーンの雷属性のカードを10枚除外する必要があるのですが、実際大会中はこの効果を使った試合も3試合あったため、条件は厳しいですが、それに見合った強さのカードだと思いました。 、逆に質問を返してしまうんですが、たるほさんは召喚獣のスロットには何を採用していましたか?

――僕は最終的に【17-090R】《イクシオン》2枚、【10-102H】《ラムウ》3枚、【3-037H】《死の天使ザルエラ》2枚の7枚を採用しました。【10-102H】《ラムウ》は【19-102L】《レフィア》を仮想敵にした場合、【18-084C】《ラムウ》の7000ダメージだと【13-055C】《イングズ》でケアされてしまう可能性があるのでそこを突破できることと「火氷水【騎士】」とのマッチアップで【22-006H】《ガーランド》をオートアビリティにスタックして除去できることを評価していました。【3-037H】《死の天使ザルエラ》は「火氷水【騎士】」に対して【22-006H】《ガーランド》と【12-126R】《ガウェイン》以外を一掃できる点や「火風土水【光の戦士】」で【19-102L】《レフィア》と【10-043H】《アルクゥ》や【18-012L】《ファリス》を同時に対処できる点を買って採用していました。

豊田ファイサリス:なるほど。召喚獣にスロットを割くのが難しいと感じていましたが、7枚採用しているというのは新鮮ですね。

――僕側は召喚獣のスロットをかなり重視していたので、結構違いが出てますね。違いが出ていると言えば、豊田ファイサリスさんの構築で驚いたのが【14-115L】《神竜》の採用です。「氷雷」は【4-120R】《レストリクター》→【18-028C】《ネロ》のようにバックアップを2枚置く展開からスタートすることが多いので、特に先攻の場合、手札の強力なカードをコストにしなければならないことが多く、手札を圧迫してしまう光/闇属性のカードはリスクになりやすいという認識でした。そのリスクを抱えたうえで【14-115L】《神竜》のようなピーキーなカードを採用するのはかなり度胸があるなと驚いていました。

豊田ファイサリス:そうなんですよね。実際それで手札がもたつき負けてしまった試合もありました。ただそれをおして【14-115L】《神竜》を採用したのは、なにより使っていて楽しいカードだったからです。

――……なるほど?

豊田ファイサリス:もちろん、ちゃんと採用した理由はありますよ? 例えば「火風土水【光の戦士】」の【19-102L】《レフィア》や、「コスト3WoL」の【21-121L】《ウォーリアオブライト》から展開されるフォワード、「土水カオスアーク」の【19-119L】《ウネ》のように「氷雷」が苦手とするデッキで脅威となるフォワードに対して【14-115L】《神竜》は明確かつクリティカルな回答になるカードです。

特に先ほど話に出た先攻バックアップ2枚展開に対して【19-119L】《ウネ》を合わせられた場合、「氷雷」はかなり苦しい戦いを強いられます。しかし返しのターンに残ったバックアップ1枚から【14-115L】《神竜》で綺麗に返せれば逆に1手で相手を追い詰めることもできます。

また、調整段階で【12-110L】《ネオエクスデス》に対して完敗した経験があったことも採用に踏み切った理由です。正直大会中に当たることはほとんどないだろうと思ってもいたのですが、どんなデッキが出てくるかわからない「Standard Championship 2024」で不安要素はつぶしておきたいという気持ちが強かったです。加えて【22-114H】《ヴィクトラ》とセットで使うことで、パワー9000以上のフォワードを対処したいという目論見もありました。

――確かに、そういった役割があると聞くとリスクに見合うリターンはあるように感じますね。

豊田ファイサリス:あと実は【14-115L】《神竜》って意外と素出ししても強いんですよね。1ターン生き残ることでカードを2枚引ける可能性があるというのは相手視点では必ず対処しなければいけないカードです。なので、仮にオートアビリティで除去できるカードがなくても出すだけで相手にアクションを強要でき、結果としてリソースを使わせられるというのがデッキのコンセプトにかみ合っていました。

――なるほど。

豊田ファイサリス:とまあここまで力説しておいて何なのですが、正直に言ってしまうと枚数に関しては1枚で良かったと反省しています。本当ならこのスロットには3枚目の【22-077H】《ガルーダ [III]》を入れようと思っていたのですが、当日朝持っていなかったためそのまま【14-115L】《神竜》2枚で大会に出てしまったという事情がありました(笑)。

――えぇ、相談してくれればよかったのに!

豊田ファイサリス:まあ【14-115L】《神竜》が2枚あることで負けた試合はなかったので、そこは結果オーライかなと思っています。

――採用カードでいうともうひとつ、LBカードの【22-115R】《サージェス》が1枚なのも「氷雷」使いとしては驚きです。僕は2枚の方がいいと思っているのですが、1枚採用に留めた理由はどういったところにあるのでしょうか?

豊田ファイサリス:これはまったくもってその通りで、大会中何度も2枚採用すればよかったと思った試合が何度もありました。というか練習段階で多分【22-121R】《ライトニング》を1枚にした方がいいだろうなと思っていたのですが、今シーズン「氷雷」で結果を残しているぱっつぁんさんが以前インタビューでも話していた“脳の健康”の話を鵜吞みにして1枚のままで大会に出ていました。

――えぇ……。

豊田ファイサリス:正直、構築に関してはかなり荒い部分が目立つと思ってます。同じ「氷雷」でも構築だけで言えばたるほさんの方が理に適ってるとは思うんですよね。でもプレイで言えば僕の方が間違いなく最強なので!

――これだけは優勝しているだけに言い返せない、くやしい……。

豊田ファイサリス:それに運もよかったですしね。カードゲームは構築もプレイングも運も全部含めて勝敗が決まるので、あの日は間違いなく僕に風が吹いてたと思ってます。

――ちなみに「Standard Championship 2024」を通して記憶に残っている試合などはありますか?

豊田ファイサリス:印象的だった試合が2試合あって、5回戦目の「氷土」との対戦と準決勝の「火氷水【騎士】」との対戦がどちらも自分のプレイを成長させてくれた試合だったので記憶に残っています。

――それぞれどんな試合だったのでしょうか?

豊田ファイサリス:「氷土」との試合は、とにかく終始相手がアドバンテージの面で優勢を保っている試合で、途中まで半ばあきらめながら対戦していたのですが、あるターンに「この試合は徹底的に守りに入ればまだ勝機はあるかもしれない。」と気が付いたんです。 というのもこの「氷土」は【22-060H】《ギード》によるドローを軸に戦うデッキで、アドバンテージを稼ぐことは得意な反面、プレッシャーのあるアタッカーはあまり多くないデッキでした。転機となったターンは相手とこちらの手札には大きく差が開いていたのにも関わらず相手は何も行動することなくターンを返してきたのですが、そこでこのデッキにこれ以上の攻め手はないのではないかという直感が閃きました。


そこから徹底的に守る展開に入ったことで、結果的にその試合は相手をデッキ切れに持ち込み勝利したのですが、こういった戦い方はこれまでの自分にはない発想での勝利だったので大きな自信につながりました。

もう一試合、準決勝の「火氷水【騎士】」との試合ですが、こちらはこれまで自分が大きな舞台の戦いで毎回準決勝で敗退していた経験があったため自分にとって一つの壁と言える戦いでした。

そんななか1本目のゲームを事故のような形で落としてしまい「また今回もダメなのか…」という諦めムードになってしまったのですが、迎えた2本目のゲームではなんとか自分を奮い立たせ何も手がない状況であえてバックアップをすべてアクティブのまま返すなどブラフプレイも全力で行ない、その甲斐もあってか無事準決勝を勝ち切ることができました。 一つの壁を乗り越え自分の殻を破るきっかけになった今回の準決勝は「Standard Championship 2024」でも特に価値のある試合だったと思います。 先ほどプレイは自分が最強だと言いましたが、今そう言えるのもこの2試合があってこそだと思っています。

――大会を通じて、自分の成長を実感できる経験は自信にもつながりますよね。「Standard Championship 2024」を経て大きく成長した豊田ファイサリスさんですが、最後に「世界選手権2024」に向けた思いなどあれば聞かせてください。

豊田ファイサリス:正直優勝こそしたものの、今の自分の実力が日本代表として見合ったものなのかという思いがまだふわふわとしています。ですが出場する以上、目標は優勝です。「世界選手権2024」には今ある100点のプレイングに100点のデッキ構築を身に着けて挑みたいと思います。

――ありがとうございました!

 


◆おわりに
今回は「Standard Championship 2024」で見事優勝を果たし「世界選手権2024」進出を決めた豊田ファイサリスさんのインタビューをお届けしました。
持ち前の自信家な一面を見せつつも、真摯に『FFTCG』に向き合う姿勢から日本代表の風格を感じさせられました。
この大会で得た成長が「世界選手権2024」で彼をどう活躍させるか、今から楽しみですね。

そして「Standard Championship 2024」で「世界選手権2024」の切符を手にしたのは彼だけではありません。
近いうちに二人目の日本代表・ありかさんのインタビューもお届けしますのでぜひお楽しみに!

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!