【FFTCG】独自の構築理論と戦法に基づくアグロで日本代表の座に! ~「Standard Championship 2024」準優勝者インタビュー~

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「Standard Championship 2024」で準優勝を果たし、2人目の日本代表プレイヤーとなった、ありかさんのインタビューをお届けします。

◆はじめに
皆さん、こんにちは!
『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。

今回は、先週に引き続き「Standard Championship 2024」のインタビュー記事をお届けします。 
インタビューに答えてくれたのは昨年の「Standard Championship 2023」に続いて2年連続で準優勝を果たし「世界選手権 2024」への切符を手にされた、ありかさんです。 

環境で注目を集めていなかった「氷単」をなぜ選択したのか、どのような経緯で「Standard Championship 2024」を勝ち進んでいったのかについてお聞きしました。

それでは、さっそく始めていきましょう。

 


◆役割を限定することで常時ポテンシャルを発揮し続ける“金太郎飴”型「氷単」
――「Standard Championship 2024」準優勝、そして「世界選手権 2024」への出場権獲得、おめでとうございます! 

ありか:ありがとうございます。

――ありかさんに初めてインタビューさせていただいたのはちょうど昨年の「Standard Championship 2023」のときで、ありかさんは『FFTCG』を始めてまだ数か月というキャリアのなかで決勝まで勝ち上がり、大きな話題となりましたね。あれから1年、再び決勝の舞台に立ち、敗れはしたものの自身初となる「世界選手権 2024」への出場権を手にしましたが、はじめに今のお気持ちを率直に聞かせてもらえますか。

ありか:まずは純粋にうれしいというのがありますね。前回も今回も準優勝という結果は同じでしたが、今年は「世界選手権 2024」の出場権がもらえたので、負けても得られるものがあったという意味でうれしいと感じました。また『FFTCG』を始めてかれこれ1年くらい経つのですが、遊んできたなかで続けてきたいろいろな努力が実を結んだ大会となったというのもうれしかったです。

――「Standard Championship 2023」では「火土水【光の戦士】」という当時はまだマイナーだったデッキタイプで勝ち上がったことでも注目を集めましたが、今回の「Standard Championship 2023」でも「氷単」という現在の環境ではあまり注目されていなかったデッキを選択されていました。このデッキ選択にはどういった経緯があったのでしょうか?

ありか:今回のデッキですが、メタゲームというものをまったく考えずに選択しました

●デッキリスト「氷単」(「Standard Championship 2024」準優勝 フォーマット:スタンダード)

カード番号 カード名 枚数
メインデッキ
フォワード(34枚) 
【15-128L】 《ノクティス》 3
【16-042R】 《ラスウェル》 3
【21-021C】 《赤魔道士》 3
【1-033C】 《アルガス》 2
【20-041R】 《レノ》 3
【20-039R】 《ルード》 3
【22-032L】 《セフィロス》 2
【20-040L】 《ルーファウス》 3
【18-019R】 《ヴァイス》 3
【16-030L】 《シャントット》 3
【21-036H】 《ヤ・シュトラ》 3
【13-022H】 《シド・ランデル》 3
バックアップ(14枚)
【21-039C】 《ルフェイン人》 3
【11-133S】 《ケットシー》 3
【16-041C】 《ユウナレスカ》 3
【3-026C】 《カヅサ》 2
【18-028C】 《ネロ》 3
召喚獣(2枚)
【21-028H】 《シヴァ》 2
LBデッキ
フォワード(8枚)
【22-115R】 《サージェス》 3
【22-114H】 《ヴィクトラ》 2
【22-120H】 《クラウド》 2
【22-124H】 《リレルリラ》 1

――いわゆる「火氷水【騎士】」や「火風土水【光の戦士】」といった「秘められた希望」環境での有力デッキを意識しての大会参加は考えていなかったと?

ありか:はい。もちろん無視していたわけではないですが、私自身は「秘められた希望」の発売以降、「MASTERS 2024」には「氷土雷【闇の戦士】」や「水雷モンスター」といったデッキを使って大会に参加したり、ショップ大会でも思いついたデッキをいろいろ試すつもりで参加してきました。ですが、いざ「Standard Championship 2024」で使うデッキを決めようと考えたとき、環境的にしっくりくるデッキがなかったんです。それで「これだけ悩むんだったら、勝っても負けても使っていて一番楽しかったデッキを選ぼう」と思い、「第五期名人位決定戦」で使用しコンセプトを気に入っていた「氷単」を選択することにしました。

――ほかの候補デッキは、どういったところがしっくりこなかったのでしょう?

ありか:たとえば「MASTERS 2024」津大会で使用しベスト4に入った「氷土雷【闇の戦士】」は「火氷水【騎士】」や「氷雷」に対して優位に立ち回れるデッキだったのですが、調整の結果【16-129L】《カオス》+【19-105H】《アーク》のコンボを搭載したデッキに対して不利がつきやすいという欠点がありました。現在の環境では「火風土水【光の戦士】」に対するアンチデッキとして「土水カオスアーク」が一定数存在し、上位への入賞率も「火氷水【騎士】」以上であることを考えると、「氷土雷【闇の戦士】」がポテンシャルを発揮しにくい環境なのではないかという懸念がありました。

「水雷モンスター」は打点形成力が高く「火風土水【光の戦士】」に対して有利かつ、モンスター特有の除去耐性を持つことで【22-118H】《シャントット》を除く有効な除去手段がないことから「土水カオスアーク」に対しても有効なデッキではあったのですが、キャラクターをダル・凍結できるデッキが苦手なことと、除去手段が【20-102L】《ミラ》に依存していたことでフォワードを複数展開するデッキにも弱いことから「火氷水【騎士】」に対して著しく勝率が落ちてしまうことがネックでした。

どちらのデッキもポテンシャルを感じさせる要素はありつつも、特定のデッキに対して著しく勝率が下がってしまうことがしっくりこないポイントでした。

その点「氷単」は各デッキに対して明確な勝利の筋道が立っており、プレイの指標さえ間違えなければ苦手な「火氷水【騎士】」に対しても目算で3割ほどの勝率が見込めていました。この3割を高いと見るかと言われれば怪しいところですが、私の予想ではラウンドが進むほど「火氷水【騎士】」と当たる確率は低くなっていくと見立てていたので、トーナメントを通して見れば十分な勝算が見込める数値だと判断しました。

――なるほど。ありかさんの「氷単」は氷属性の手札破壊とダル・凍結を活かしたいわゆるアグロ型に分類される構築だと見受けられますが、どういったコンセプトのデッキなのでしょう? 

ありか:ズバリ言ってしまえば、私の「氷単」のコンセプトは“金太郎飴デッキ”です。個別のカード単位で採用を決めるのではなく、役割を限定しカードを選定することで、引きに左右されない再現性の高い挙動を目指していますデッキを構成する要素は大きく「手札破壊」「ダル・凍結」「ヘイスト」の3つに分けられます。これらのカードを相手のデッキや先手後手によってパターンに当てはめて展開していくのが「氷単」の戦い方です。基本的にゲーム序盤から低コストの「手札破壊」「ダル・凍結」によって相手の行動を縛り続け、序盤に作った優位を保ったまま勝利を目指します。

この際に課題となるのが、EXバーストや「Damage」アビリティといった、ゲームが進行することで攻めている側の優位性が保てなくなる要素です。これに対する解答として「氷単」が見いだしたのが、「ヘイスト」によってゲームスピードを速めることと、パーティーアタックによってゲームスピードを維持しつつアドバンテージを獲得することです。

――ゲームのテンポを操ることでイニシアチブを獲ろうというアプローチですね。 

ありか:そのとおりです。まず「ヘイスト」でゲームスピードを速めることですが、これは単純に優位性が失われる前にゲームに勝利することで相手の逆転を封じるという考え方です。多くのアグロデッキに共通した考え方なので、これについては説明不要でしょう。

「氷単」にとって重要になるのはむしろパーティーアタックの要素です。アタック時に誘発するオートアビリティは、フィールドに出たときに発動するオートアビリティと違って繰り返し発動させられるため、継続したアドバンテージにつながる効果ですが、その反面アタックという行動が必須となるため戦闘やEXバースト、「Damage」アビリティが有効になるなど、相手にとって有利な展開につながるリスクがあります。そこでこのデッキでは、【20-040L】《ルーファウス》などが持つアタック時のオートアビリティに【21-021C】《赤魔道士》や【15-128L】《ノクティス》のオートアビリティを重ね掛けすることで1回のアタックで得られるリターンをより大きくし、リスク以上のリターンが得られることを意識しました。

 また、パーティーアタックをするためにはアタックできるフォワードが必須ですが、「ヘイスト」を持つフォワードを多く投入することでフィールドに【15-128L】《ノクティス》や【21-021C】《赤魔道士》の相方がいない状態からでもパーティーアタックを狙いやすくしているのも特徴です。

どのカードを引いても一貫性のある動きができる“金太郎飴”のようなデッキを目指した代償として単純なデッキパワーは低くなってしまいましたが、その差をパーティーアタックのギミックに全振りすることで埋めようというアプローチから生まれたのがこの「氷単」です。

――役割の近いカードを採用している“金太郎飴”とのことですが、個々のカードについても聞いていきたいと思います。まずこのデッキで特に重要度の高いカードはどれでしょうか? 

ありか:単純な強さでいえばやはり【20-040L】《ルーファウス》が抜きん出ていますね。手札破壊とダル・凍結だけでなく、ヘイスト要員となる【20-041R】《レノ》を回収できるのでデッキの主要素をすべて兼ね備えているカードと言えます。そのうえ条件を満たせば2CPでのキャストも可能と、正直強すぎて言うことがないカードです。単体で使って強いのはもちろんですが、「氷単」には【20-041R】《レノ》と【20-039R】《ルード》も採用されているので「氷雷」以上にポテンシャルを発揮できるという独自の強みもあります。 

 
【20-040L】《ルーファウス》と並んで最強なのが、【16-042R】《ラスウェル》ですね。このカードは「秘められた希望」環境の顔とも言えるカードですが、当然「氷単」でも活躍してくれます。「火氷水【騎士】」のようにいつでも【ジョブ(騎士)】がアタックしていたときのオートアビリティを狙うのは難しいですが、2枚持っている場面なら片方で特攻をしかけてもいいくらい、能力が強力です。


――氷属性のカードといえば【18-019R】《ヴァイス》と【18-028C】《ネロ》のパッケージも強力ですね。

ありか:「氷雷」ほど安定してそろえることはできませんが、手札破壊の手段が多いのでこのデッキでは【18-019R】《ヴァイス》単体でプレイすることもたびたびあります。小テクレベルではあるんですが、【3-026C】《カヅサ》と合わせることで防御的に使えるのは知っておくと役に立つかもしれません。


――ほかに重要度が高いカードなどはありますか?

ありか:重要というか、扱い方が難しいのが【11-133S】《ケットシー》です。ご覧のとおりこの「氷単」では3枚採用しているのですが、これは「火風土水【光の戦士】」などに採用されている【12-074H】《アルジイ》を意識しています。コスト2のバックアップのため初手から置きやすいですが、「とりあえず」で出して【12-074H】《アルジイ》を抜きそびれてしまうと非常に苦戦を強いられるので、手なりで置かず我慢のプレイをしなければなりません。


同様に扱いが難しいカードとして【13-022H】《シド・ランデル》があります。 L
imit Breakの登場などから需要の高いカードである一方、対処手段を持つデッキに対しては隙の大きなカードでもあるため使いどころが難しいカードです。


これらのカードを使ううえで重要になるのが「序盤にどれだけ手札を捨てさせ、相手から情報を引き出せるか」ということです。特に先攻時は積極的に手札破壊で情報を開示させる必要があるため、マリガンの段階で【20-040L】《ルーファウス》や【21-039C】《ルフェイン人》を探しに行くことが重要です。

――「氷単」が現時点で使用できるLBカードは【22-114H】《ヴィクトラ》、【22-115R】《サージェス》【22-124H】《リレルリラ》の3種類に限られますが、【22-120H】《クラウド》を2枚採用していることには何か意味はあるのでしょうか?

ありか:【22-120H】《クラウド》はゲーム序盤にLBコストとして公開することで相手に「氷雷」かも? と誤認させ、ミスリードを誘う可能性があるカードです。もちろん些細な差ではありますが、今「火氷」が流行っているなら【22-112R】《ザックス》を、「氷土」が流行っているなら【22-119R】《マート》を採用するといった構築努力はできるだけ行なうべきだと私は考えています。

――細かな情報ひとつでも、勝ちにつながる可能性があるのであれば最大限活かしていこうという姿勢には共感できますね。そういった努力も今回の結果につながっているかと思います。次に「氷単」をプレイするうえで意識していたことなどはありますか?

ありか:基本的に先攻の場合は【20-040L】《ルーファウス》、【21-039C】《ルフェイン人》【1-033C】《アルガス》などの手札破壊からゲームに入ることを心がけていました。先ほど【11-133S】《ケットシー》の扱いについて触れたときにも話しましたが、相手によって動きのパターンを決めていく「氷単」にとって、ゲーム序盤にデッキの情報を開示させることは非常に重要です。特に先攻1ターン目は相手のデッキに関する情報が一切ない状態で動かなければならないため、まずは手札破壊から入ることが大事です。

また相手に合わせてという点では、動けるときにオールインするべきなのかブレーキを踏むべきなのかの判断も大切です。一番顕著なのは後攻時、初手にコスト4のカード1枚とコスト2のカード2枚がある局面で、本来であればすべてのリソースをオールインするのが強い場面なのですが、氷属性が見えた場合だけは手札を3枚以上残さなければ【22-114H】《ヴィクトラ》に狩り返されてそのままマウントをとられてしまう可能性があります。これはわかりやすい範囲での一例ですが、こうした細かな判断の積み重ねで勝利を手繰り寄せていくことが「氷単」にとって重要なアプローチです。

――再現性が高いからこそ、決められた型にはまった堅実なプレイを求められるわけですね。ある意味で変わり映えのしない試合も多くなると思うのですが、「Standard Championship 2024」を通じて印象に残った試合などはありましたか?

ありか:個人的に思い入れの強かったのが、準々決勝のKakkaさんとの試合でした。おっしゃるように試合内容は既定路線というか順当なデッキの相性差が出たものだったのですが、Kakkaさんには昨年の「Standard Championship 2023」の決勝で敗れていたので、舞台は違えど今回そのリベンジができたことは自分にとって糧となったと思っています。

――では最後に「世界選手権 2024」に向けた意気込みなどあればお願いします。

ありか:個人的にカードゲームという遊びは、自分が楽しいと思える環境があってのものだと思っているので、「世界選手権 2024」を楽しめるかどうかは自分が楽しいと思えるデッキに出会えるかどうかがカギだと思っています。なので今はがんばろうというよりは、大会を最大限楽しめるようなデッキが見つかればいいなというのが率直な気持ちです。

――ぜひご自身のベストデッキを見つけて「世界選手権 2024」を楽しんできてください。世界の舞台でも独創的なデッキで活躍されることを期待しています!ありがとうございました!

 


◆おわりに
今回は「Standard Championship 2024」で準優勝し、「世界選手権 2024」へ駒を進めたありかさんへのインタビューでした。

独特の視点で環境に切り込むありかさんのデッキ選択からは非常に学ぶことが多いですが、「世界選手権 2024」の舞台でもぜひその手腕を見せつけてもらいたいですね。
日本が誇る気鋭のデッキビルダーの実力に今から期待が高まります。

さて「Standard Championship 2024」も終わり、「秘められた希望」環境もまもなく次のシーズンへと移ります。
世間では「秘められた試練」の新カードプレビューも進んでいて、新環境の到来の気配も漂ってきています。

こちらの記事でも今後「秘められた試練」のデッキや環境についての記事をお届けしていきたいと思いますのでぜひお楽しみに! 

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!