『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「L3 Championship 2023」で優勝し、日本代表の座を勝ち取ったriruさんのインタビューをお届けします。
◆はじめに
みなさん、こんにちは!
『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。
先週末、大阪・梅田のAP大阪茶屋町にて「L3 Championship 2023」が開催されました。
本大会は優勝者に「世界選手権 2023」への出場権利が与えられるトーナメントで、全国各地からプレイヤーが集い、「世界選手権」の切符をかけ87名のプレイヤーが覇を競う大会となりました。
熱戦の模様はスクウェア・エニックス公式YouTubeチャンネルのアーカイブからもチェックできるので、見逃してしまった方はそちらでぜひご覧ください。
僕もプレイヤーとして調整を重ねてきた「風土」を使って参加し、初日の予選ラウンドを6勝2敗で終えたものの最終順位は11位。8位までのプレイヤーによる2日目の決勝ラウンドへの進出は叶いませんでした。あと一歩のところで及ばず悔しい結果となってしまいましたが、この結果をバネに今後も精進したいと思います。
そんな「L3 Championship 2023」を制したのは、関西屈指の実力者であるriruさんでした。今回は強豪を打ち破りみごと2人目の日本代表選手として「世界選手権 2023」への切符を手にしたriruさんにインタビューを行ない、ともにトーナメントを戦い抜いた「風土」デッキについてお話をうかがいました。
◆対アグロを意識したチューニングで勝ち抜いた「風土」
――「L3 Championship 2023」優勝おめでとうございます。決勝戦は僕も配信のアーカイブであらためて拝見しましたが、ヒリつくような展開の連続でまさに手に汗握る試合でした。
riru:ありがとうございます。
――まずは「L3 Championship 2023」で「風土」を選択した経緯から教えてください。
riru:今大会で「風土」を使用した一番の理由は、「英雄の夜明け」環境でもっとも練習を重ねて手になじんでいたデッキだったからです。
●デッキリスト:「風土」(「L3 Championship 2023」優勝 フォーマット:L3構築)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(24枚) | ||
【18-050L】 | 《ユフィ》 | 3 |
【20-061C】 | 《ユフィ》 | 2 |
【18-049R】 | 《ユーリィ》 | 3 |
【20-049R】 | 《チェリンカ》 | 1 |
【19-045H】 | 《ソフィ》 | 1 |
【20-057L】 | 《女神》 | 1 |
【18-134S】 | 《プロンプト》 | 2 |
【20-066R】 | 《イグニス》 | 3 |
【18-135S】 | 《グラディオラス》 | 2 |
【18-119C】 | 《チェリンカ》 | 1 |
【18-139S】 | 《ノクティス》 | 3 |
【19-103H】 | 《ティーダ》 | 2 |
バックアップ(18枚) | ||
【19-047C】 | 《謎のじいさん》 | 1 |
【18-036R】 | 《イリス》 | 2 |
【18-042C】 | 《ジージェ》 | 1 |
【18-051C】 | 《リフキン》 | 1 |
【20-048R】 | 《スティルツキン》 | 2 |
【20-052C】 | 《ナッシュ》 | 2 |
【19-019R】 | 《ヴィンセント》 | 1 |
【18-057C】 | 《コルカ》 | 2 |
【20-074C】 | 《採掘師》 | 3 |
【20-084R】 | 《レオ》 | 3 |
召喚獣(6枚) | ||
【18-063C】 | 《ハシュマリム》 | 3 |
【18-136S】 | 《タイタン》 | 3 |
モンスター(2枚) | ||
【20-072C】 | 《ギガース》 | 1 |
【18-052H】 | 《アーリマン》 | 1 |
riru:「L3 Championship 2023」に向け調整を重ねるなかでいろいろデッキを試しましたが、候補に挙がったデッキのなかではもっとも感触がよかったこともあり、調整では「風土」を回す機会が特に多かったです。同じくらい好感触だったデッキとして「火氷」も前日まで候補に考えていましたが、最終的に練度の面で「風土」を超えるデッキはないと考え当日は「風土」を選択しました。
――「風土」は「英雄の夜明け」環境で行なわれた「日本選手権 2023 Autumn」のL3構築のトーナメントでも特に使用率の高いデッキでしたが、デッキの構想はどのタイミングで考えられていたのでしょう?
riru:今シーズンは「L3 Championship 2023」が開催されるということもあり、マナソース勢(riruさんも所属する和歌山のカードショップ「マナソース」で活動するグループ)のなかでも「英雄の夜明け」発売直後から「風土」は話題に挙がっていました。その後も「日本選手権 2023 Autumn」で活躍したリストも参考にしつつ調整していったのですが、環境が進むにつれ「風土」と「氷雷」が中心となる環境だということがわかってきて、特にフィールドに残ったフォワードの仕事量が多い「氷雷」に対抗するためには除去の重要性が高いと考え、盤面に触れるカードを多めに採用するよう意識した「風土」の構築にトライしました。
――具体的にはどういったカードを採用していったのでしょうか?
riru:「風土」はバックアップの展開が重要なため、除去効果を持つバックアップとして【18-057C】《コルカ》に加え【19-047C】《謎のじいさん》と【19-054C】《ヴィンセント》を採用しました。
【19-047C】《謎のじいさん》は除去効果を発揮するために Damage 5 を満たす必要があるためコントロール相手には少し悠長であるものの、仮想敵である「氷雷」は攻撃的なデッキなためEXバーストを含めて効果の発動を狙えるチャンスが多く、同じくDamage効果を持つ【19-019R】《ヴィンセント》は Damage 3 と条件がやや緩めのアクションアビリティによる除去のため、「氷雷」相手だけでなく、たとえば「風土」のミラーマッチにおいて相手の【18-139S】《ノクティス》のアビリティの誘発に対応して除去ができるなど、使い勝手がよくて大会中に使用する機会も多かったです。
このスロットには直前まで【20-063C/15-058C】《竜騎士》を採用して【20-044L】《エッジ》を見据えたクリスタルギミックも検討していましたが、最終的にはこちらを採用してよかったと感じました。
召喚獣については元々【19-035R】《アレキサンダー》を採用する構築が主流でしたが、対「氷雷」を考えるとあまり有効ではないと感じたため、【19-035R】《アレキサンダー》の最大の仮想敵である【18-050L】《ユフィ》を対処できて「氷雷」に対しても役割が持てる【18-136S】《タイタン》を3枚採用しました。
これだけでも従来の「風土」と比べてかなり除去を厚めに採用していますが、調整過程で「氷雷」の【20-088L】《エスティニアン》が非常に強力ということが話題になり、調整メンバーのすすめもあって、このデッキにはさらに追加で【20-072C】《ギガース》を採用しました。
【20-088L】《エスティニアン》以外にも現環境にはパワー8000のフォワードとして【18-019R】《ヴァイス》や【18-116L】《セフィロス》といった除去する優先度の高いフォワードが多く、この「風土」にはヘイストも多く採用しているため、ブロックを封じてダメージを押し込むという点でも一役買ってくれるカードでした。個人的には2枚以上の採用も視野に入るカードという印象でしたが、デッキのスロット的に1枚が限界だと感じたため採用自体は1枚に抑えています。
――かなり徹底して「氷雷」に勝つことを意識したデッキになっていますね。その点では【20-057L】《女神》はあまり対「氷雷」というカードではないように感じます。
riru:【20-057L】《女神》は「氷雷」ではなく、対「風土」のミラーを意識して採用しています。私のデッキには【20-127L】《神竜》を採用していないぶん、相手が複数のフォワードを一気に出してきたという状況をケアする手段は残したいと考えており、【20-057L】《女神》を採用しました。結果から言えば大会を通じてあまり活躍の機会はありませんでしたが、保険として必要な存在だったと思っています。
――「L3 Championship 2023」の決勝トーナメントではデッキリストが公開されるので、採用されていないことがバレてしまうとそれ自体がリスクにもなることも考えられますしね。【18-050L】《ユフィ》は言うまでもなく「風土」の最重要カードの1つですが、【20-061C】《ユフィ》を2枚採用していることからも、スペシャルアビリティの「生者必滅」を強く意識していることが感じ取れます。
riru:【18-050L】《ユフィ》はデッキ内でも最強のカードといって差し支えないカードですからね。その弾となる【20-061C】《ユフィ》もなるべく多く採用したいと考えていました。【18-042C】《ジージェ》や【18-051C】《リフキン》も絡めて、積極的にフィールドに出すことを意識していました。
――【18-051C】《リフキン》から出す候補として、【18-050L】《ユフィ》だけでなく【20-066R】《イグニス》が増えたことも「英雄の夜明け」で得た大きな強化ですね。
riru:そうですね。【20-066R】《イグニス》をサーチする機会も結構多かったです。それでいうと【カテゴリ(XV)】のギミックは大きく強化されました。なかでも調整が進むにつれて採用枚数を伸ばしたのが【18-134S】《プロンプト》です。
元々バックアップの【20-055C】《プロンプト》と両方を採用していたのですが、実際に使ってみると単純にヘイストフォワードとして優秀なことはもちろん、アタック時にカードを2枚引く効果を狙えるタイミングがかなり多く、とても優秀だったためフォワードのみの採用にシフトしました。
――僕は【20-066R】《イグニス》のバリューを考慮してバックアップも採用したままにしましたが、このあたりの構築はかなりプレイヤーの好みが出るポイントだったように感じます。好みといえば、僕は【20-049R】《チェリンカ》が【20-130L】《ゼノス》の的になることを嫌って採用を見送ったので、riruさんとしてはどういった観点で【20-049R】《チェリンカ》を採用されていたのかが気になります。
riru:【20-048R】《スティルツキン》でパワーラインを確保しやすいということはもちろんですが、手札を捨てて【18-049R】《ユーリィ》を呼び出すことで能動的に手札を減らす手段として対「氷雷」で役に立つ機会が多かったです。今大会でも【20-049R】《チェリンカ》を経由して【18-049R】《ユーリィ》を出す機会が何度かあったので、リスクよりもリターンのほうが上回っていたかなと感じています。
――【20-049R】《チェリンカ》はモンスターをブレイクできる【18-119C】《チェリンカ》も採用されているので、状況に合わせて使いつつ【20-048R】《スティルツキン》で【18-049R】《ユーリィ》とともにパワーを上げる受けの広いプレイができるのがいいですね。モンスターをブレイクする手段としては【19-045H】《ソフィ》も優秀ですね。
riru:【19-045H】《ソフィ》は調整メンバーからすすめられて採用したカードですが、大会中は基本的にヘイストフォワードとして運用していました。
――それだけ「風土」というデッキにおけるヘイストという効果が重要だったということですね。【19-103H】《ティーダ》は対「氷雷」に限らずほとんど無駄になることがない除去カードですが、序盤の展開がタイトな「風土」では光属性であることがストレスになるという認識でした。2枚採用によるリスクなどは感じませんでしたか?
riru:さすがにこれだけ破格の除去効果にEXバーストまでついていて弱いわけもなく、光属性が持つ手札にダブついたときのリスクよりも、総合的なバリューを優先して複数枚採用したほうがよいだろうと考えて2枚採用としています。前日までは【19-103H】《ティーダ》と【20-130L】《ゼノス》を1枚ずつ採用していましたが、最終的にはEXバーストを持つことを評価し2枚分の枠を【19-103H】《ティーダ》に割くことにしました。
――除去性能という意味では【18-052H】《アーリマン》もかなり強力な印象です。
riru:そうですね。特にフォワード化できるモンスターである点が優秀で、対「水単」のような除去を軸としたデッキに強く、相手の【20-127L】《神竜》に対してコスト軽減させる隙を作らずフォワードを展開できるという点でも優れたカードでした。
――モンスターについては、僕は対「水単」を意識して【18-040H】《ケルベロス》まで採用していたので、2枚というのは少し手薄かなという印象も受けています。同じ「風土」を使った立場から見ても、環境の認識に違いがあると感じました
riru:そのあたりの認識のずれは今環境ではかなり顕著だったと思います。例えば「風土」対「氷雷」の相性関係についても「風土」を使っているプレイヤーは「氷雷」に有利だと言っていましたし、逆もまた然りでした。
――今回のriruさんの優勝は、ある意味でメタゲームへの認識の現時点での答え合わせになったのかもしれませんね。しかしこれだけ「氷雷」を意識していたなかで、自分で使う選択肢には入らなかったのでしょうか?
riru:どうしても【18-028C】《ネロ》を引いた試合とそうでない試合でデッキパワーの差を感じてしまい、自分で使おうという気持ちにはなりませんでした。これも練度による差は大きいと思っており、実際「氷雷」を使っていたプレイヤーは【18-028C】《ネロ》がなくても戦えるということを見出していたと思います。
――もう1つの候補だったという「火氷」も練度の都合で使用を見送ったとのことでしたが、「火氷」にはどういった強さがあったのでしょうか?
riru:「火氷」はL3構築では貴重な「バックアップをサーチできるバックアップ」を擁するデッキです。そのうえで【18-107L】《アクスター》が「風土」に抜群に刺さるため、「風土」と戦うことを主軸においてメタゲームを考えればこちらを使ったかもしれません。
――大会を通じて、riruさんが思い描いたメタゲームとの差はありましたか?
riru:予想外、というほどではありませんが、想像していたより「水単」と「火氷雷【VI】」が多かったのは少し意外でした。
◆シルバーコレクターから、関西初の日本代表へ
――riruさんは高い実力をお持ちですが、これまで大きなトーナメントでは準優勝に留まることが多く、シルバーコレクターと言われてきた印象ですが、「L3 Championship 2023」での優勝はそんなriruさんの実力を示す結果になったと思います。あらためて優勝した今のお気持ちを教えてください。
riru:これまで大きなタイトルのかかった試合ではどうしても一歩勝ち切れないことが多かったので、この結果は非常にうれしいものとなりました。
――今回ともに調整を行なったというマナソース勢は関西圏の大会でよく上位に名を連ねていますが、普段はどういった環境で「FFTCG」をプレイされているのでしょう?
riru:マナソースは普段私がカードゲームをプレイしている和歌山のショップです。ここに和歌山や大阪から「FFTCG」プレイヤーが集まっており、そのメンバーのことをマナソース勢と呼んでいます。
――riruさんの実力も、そのメンバーとの調整で培われてきたものということですね。
riru:そうですね。私はプレミアム版のカードのみを集めているため調整用のデッキを数多く作れるわけではないのですが、店員でもあるMANASOURCEさん(※「L3 Championship 2023」のベスト4に入賞した同じグループのプレイヤー)がたくさんデッキを用意してくれたため、調整相手には不自由なく過ごすことができました。
常連メンバーのアドバイスから得るものも多く、【19-045H】《ソフィ》や【18-136S】《タイタン》、【20-072C】《ギガース》といったカードの採用はそういったアドバイスがあってこそだったので、今回の優勝もそういったみんなからのフィードバックのおかげだと思っています。
――チームの協力なくしては達成できなかった結果だったということですね。それでは最後に関西勢では初の日本代表選手として、「世界選手権 2023」に臨む意気込みをお願いします。
riru:優勝トロフィーをマナソースに持ち帰ることを目指してがんばりたいです。ただひとつ気がかりなのが、「世界選手権 2023」のフォーマットが2デッキスタンダードということです。マナソースのメンバーは限られたプールのなかから最適なデッキを探し出すスタイルを好むプレイヤーが多いので、カードプールが広大なスタンダードには苦手意識があります。ですが、「世界選手権 2023」にはみんなに協力してもらいながら万全の調整をして臨みたいと思います(笑)。
――riruさんが「世界選手権 2023」で活躍する姿を見るのが今からとても楽しみです。ありがとうございました。
◆おわりに
今回は「L3 Championship 2023」でみごと優勝を果たし、関西初の日本代表選手となったriruさんにインタビューを行ない、アグロ環境を意識したという「風土」についてお話をうかがいました。
2日間にわたる長丁場の戦いを、高精度でメタゲームを読み当てて勝ち取っての優勝は、riruさんの確かな実力を物語る結果といえるでしょう。シルバーコレクターと呼ばれ続けた男が初めて参加する世界選手権でどんな活躍を見せるのか、今から楽しみでなりません。
「世界選手権 2023」に向け残された切符はあと2枚。10月の「JAPAN CUP 2023」、そして「日本選手権2023」本戦ではだれがその切符を手にするのか、メタゲームの動向も含め追いかけていきたいと思います。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!