【FFTCG】勝つなら今!環境を読み切った「氷雷【VIII】」で勝利をつかむ ~「MASTERS 2024」岐阜大会優勝者インタビュー~

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS 2024 3rd season」岐阜大会で優勝した、やぶさんのインタビューをお届けします。

◆はじめに
皆さん、こんにちは!
『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。

今週も前回に引き続き「MASTERS 2024 3rd season」の優勝者インタビューをお届けしたいと思います。
今回お届けするのは「MASTERS 2024」岐阜大会で「氷雷【VIII】」を使用して優勝されたやぶさんのインタビューです。 

「秘められた試練」環境のL3構築でもメタゲームの一角を担う「氷雷【VIII】」がどのようなデッキに仕上がったのか、その真価を確信し大会に持ち込んだやぶさんに解説していただこうと思います。

それでは、さっそく始めていきましょう。

 


◆確信に満ち選択した「氷雷【VIII】」とともに挑んだ岐阜大会
――「MASTERS 2024」岐阜大会優勝おめでとうございます!

やぶ:ありがとうございます。

――今回、やぶさんは「氷雷【VIII】」を使用してみごと優勝されました。「氷雷【VIII】」は今シーズンのL3構築でも注目を集めているデッキタイプのひとつでしたが、今回はどういった経緯で使用することを決めたのでしょう。

やぶ:もともと私自身『FINAL FANTASY VIII』が好きだったこともあり、「秘められた試練」環境が始まって以降は「L3 Championship 2024」に向けて「氷雷【VIII】」ばかり調整していました。そんななか、先日行われた「MASTERS 2024」さいたま大会の結果を見て「「氷雷【VIII】」で勝つには今しかない!」と思い立ち、身内のプレイヤーにも内緒で、今回の岐阜大会へ参加することにしたんです。

●「氷雷【VIII】」(「MASTERS 2024」岐阜大会優勝 フォーマット:L3構築)

カード番号 カード名 枚数
メインデッキ
フォワード(33枚)
【22-010L】 《セルフィ》 3
【21-023L】 《アルティミシア》 3
【22-031H】 《スコール》 3
【23-029R】 《ゼノス》 2
【21-026C】 《吟遊詩人》 1
【22-022R】 《キスティス》 3
【21-037C】 《リーパー》 1
【22-073L】 《アルティミシア》 2
【22-075H】 《イデア》 3
【21-081L】 《アーヴァイン》 3
【22-079L】 《サイファー》 3
【22-084R】 《風神》 3
【22-087R】 《雷神》 3
バックアップ(10枚)
【21-039C】 《ルフェイン人》 3
【22-036C】 《リノア》 1
【23-030C】 《セラ》 1
【23-078C】 《アリゼー》 2
【21-085H】 《ガストラ皇帝》 3
召喚獣(7枚)
【23-024R】 《シヴァ》 3
【21-028H】 《シヴァ》 1
【23-080R】 《オーディン》 3
LBデッキ
フォワード(8枚)
【22-115R】 《サージェス》 2
【22-114H】 《ヴィクトラ》 1
【23-120R】 《クジャ》 1
【23-127R】 《ニックス》 1
【22-120H】 《クラウド》 1
【23-130H】 《ルッソ》 1
【22-112R】 《ザックス》 1

――やぶさんは和歌山を拠点に活動されてますよね。和歌山から岐阜はけっこうな遠征ですが、いったい何がやぶさんと「氷雷【VIII】」を岐阜へ駆り立てたのでしょうか?

やぶ:それはさいたま大会の結果から考えられるメタゲームの推移が「氷雷【VIII】」にとってベストな環境を作り出すだろうという予感でした。

――なるほど。具体的にどういった環境になると予想していたのですか?

やぶ:さいたま大会でははらさんの「水雷【VIII+暁の血盟】」が優勝していましたが、ほかにも「氷雷【VIII】」や「火単」、それにさまざまなタイプの【ジョブ(闇の戦士)】デッキが決勝トーナメントに駒を進めており、「秘められた試練」環境の本命やそれに続くデッキの候補が出そろった大会になったと思います。

そのなかでも自分を含めて多くのプレイヤーから関心を引いたのが、Kakkaさんとeurekaさんの使用していた「火単」だったのではないかと思います。決勝戦でもKakkaさんの「火単」はバックアップの展開が芳しくなく、本領を発揮できずに負けてしまったという話を耳にしていたので、「水雷【VIII+暁の血盟】」に対して極端に不利をとるデッキという印象もなく、今後の大会では「火単」が数を増やしていくだろうという予感がありました。

しかし「火単」というデッキはバックアップを展開することでバリューを発揮するというデッキの性質上、バックアップを展開させる隙を与えない「氷雷【VIII】」目線では比較的有利な関係にあるデッキだと考えていました。またバリューカードである【22-113L】《モント・リオニス》に対しても【21-081L】《アーヴァイン》や【21-085H】《ガストラ皇帝》などのブレイクゾーン対策手段が用意できている点でも「氷雷【VIII】」に分があります


また「火単」が増えることで、「土単」をはじめとする【ジョブ(闇の戦士)】デッキが数を減らすと予想されたことも「氷雷【VIII】」にとって追い風だったと考えました。

【ジョブ(闇の戦士)】デッキの強みは【22-067L】《ナハト》をはじめとしたフォワードの展開力にあるのですが、強力なサーチ効果の代償としてデッキ内のフォワードの消費が著しく、相手からすれば【22-067L】《ナハト》や【21-064L】《イングズ》、【23-062H】《エメトセルク》など特定のフォワードを狙いうちすることで後続となるフォワードが尽きてしまうという弱点が存在するため、「火単」に対しては隙が大きくなってしまいます。

ですが「氷雷【VIII】」に対しては展開速度で置いていかれることもなく、逆に「氷雷【VIII】」は除去が少なく相手の脅威に対抗できないため【ジョブ(闇の戦士)】デッキ側に有利な相性関係となってしまっています。


このように「氷雷【VIII】」対「【ジョブ(闇の戦士)】」対「火単」はじゃんけんのような関係になっているのですが、さいたま大会の結果により注目度でいえば岐阜大会は間違いなく「火単」に比重が傾くことが予想されたので、「氷雷【VIII】」を使って勝つのは今しかないと考えました。

「水雷【VIII+暁の血盟】」に対してはまだ明確な有利不利を見極められていないものの、登場から大会まで1週間と日が浅いなかで、はらさん以上の使い手が現れることはないだろうという気持ちもありました。

――たしかに3デッキ間の相性関係については僕も同じ認識です。それだけ「氷雷【VIII】」に自信を持っていたからこそのデッキ選択だと思いますが、構築の面でもやぶさんの「氷雷【VIII】」はしっかりと煮詰められているという印象を受けます。デッキを見てまず特徴的に感じるのは【21-027L】《グリーヴァ》の不採用でしょうか。


やぶ:大会後、X(旧Twitter)でデッキの写真を公開したときも【21-027L】《グリーヴァ》についてはいろいろな方から質問をいただきました。これは断言できるのですが、今の「氷雷【VIII】」にとって【21-027L】《グリーヴァ》は自分から弱点をさらしてしまうカードだと思っています。

というのも、先ほど話題に出した「火単」、「氷雷【VIII】」、「【ジョブ(闇の戦士)】」、そして「水雷【VIII+暁の血盟】」のすべてに【21-027L】《グリーヴァ》に対して有効な除去が搭載されているんですね。

たとえば「火単」には【21-012H】《バハムート》や【23-016R】《バハムート》、そして【23-002L】《カイアス》の合計9枚が採用されていますし、【ジョブ(闇の戦士)】デッキには【22-056R】《エクスデス》が採用されています。また「水雷【VIII+暁の血盟】」にも【22-093R】《アニマ [X]》が標準で採用されており、「氷雷【VIII】」はそもそも凍結させてくるカードが多く、ミラーマッチで【21-027L】《グリーヴァ》を出そうというプレイヤーはいないでしょう。


このように、仮想敵のすべてに対してなにかしらのリスクを抱える【21-027L】《グリーヴァ》は環境的にかなり使いにくいカードだと判断したので、「氷雷【VIII】」を調整する過程で最初にデッキから外れていったカードでした。

これに対して【21-023L】《アルティミシア》で除外するカードが減るのではないかという意見ももらうのですが、そもそも「氷雷【VIII】」のゲームレンジで考えれば、【21-023L】《アルティミシア》を最大値で使うゲームはもはや相手のペースにハマってしまっているので、この点はあまり影響はないというふうに考えています。

――たしかに【21-027L】《グリーヴァ》の出しどころは「秘められた試練」環境になってから各段に難しくなったと感じますね。そういった経緯で空席となったスロットを埋めたのが【23-029R】《ゼノス》などといったカードということでしょうか。

やぶ:そうですね。「氷雷【VIII】」は【カテゴリ(VIII)】のフォワードによる早期段階からのリーサル要求が強いデッキなのですが、これに対して相手はフォワード展開で応戦していかなければなりません。そうなると相手の手札には少ない枚数の質の高いカードが残ることになるのですが、それらを捨てさせることで逆転の芽を摘んでしまえると考えました。スタンダードに比べてデッキパワーの低いL3構築ではトップドローによる解決も難しいため、相手が手札に残した有効牌をきっちり刈り取ることがとても重要になります。

なのでこれらのカードは基本的に、手札を捨てさせてから動くというよりは、応戦してきた相手の手札を奪うという意識でプレイするように心がけていました。


――【21-037C】《リーパー》や【23-030C】《セラ》といったカードまでしっかりと採用されていることからも
、相手の手札をしっかり摘み取ろうという意識が感じられますね。もうひとつ特徴的だと感じるのが【21-026C】《吟遊詩人》の採用です。

やぶ:このカードは決勝で戦ったたまごまんさんにもお褒めいただいたカードなのですが、スタンダードでの【9-114C】《不浄王キュクレイン》や【15-119L】《ポロム》の活躍からもわかるように、相手のフォワードのアビリティを失わせる効果は非常に強力だと考え採用したカードです。


主な仮想敵としてはミラーマッチの【22-031H】《スコール》や、【22-067L】《ナハト》など展開の要となるフォワードを想定していましたが、それ以外にもかなり当てどころの多い効果で想像以上に活躍してくれました。コスト4という重さも本来であれば弱点となる要素ですが、L3構築ではパワー8000も相まって対処されにくく、フィールドに定着しやすい点もよかったです。

――【23-130H】《ルッソ》からサーチできるので、1枚採用ながら汎用性が担保されているのもいいですね。

やぶ:そうですね。特に1枚採用ということで相手に存在を悟られなかったというのもこの大会では強みになったと思います。本当は「L3 Championship 2024」まで隠しておきたかったのですが(笑)。

――逆にこのカードは減らしているんだなと感じたのが【22-073L】《アルティミシア》です。

やぶ:「氷雷【VIII】」はギミックの中心が雷属性に寄っていますが、立ち上がりは氷属性からスタートさせたいので、各属性の採用バランスがかなりタイトなデッキです。そう考えたとき、何か1つ雷属性から減らせるとしたらこのカードしかないなという判断で1枚削っています。このデッキでは【23-080R】《オーディン》や【21-028H】《シヴァ》を使う兼ね合いでブレイクゾーンのカードを減らす瞬間もありますし、デッキが最大値で動いたときは【22-073L】《アルティミシア》を使わないこともままあるので。どうしても必要なときは【23-078C】《アリゼー》でのサーチもサポートできますしね。

――たしかに、必ずしも3枚である必要性はないのかもしれないですね。ちょうど話にも出ましたが、やぶさんのデッキでは召喚獣も多めに採用されています。【22-036C】《リノア》まで採用されているので、相当意識しているように感じます。

やぶ:L3環境では相手のフィールドに干渉できるEXバーストはかなり貴重ですし、1枚めくれれば簡単にゲームが傾くので、なるべく欲しいなと思って採用しています。特に【23-024R】《シヴァ》は普通にキャストしても強く、相手に【21-004L】《カイエン》をためらわせるようなプレイもできます。このプレイは【22-036C】《リノア》から見せておくことでも可能で、【21-004L】《カイエン》を使わないでほしいというけん制にしていました。

また【22-036C】《リノア》で【21-028H】《シヴァ》を選んでおくことで手札が増えるのも小テクながらかなり強かったです。【21-028H】《シヴァ》はバックアップが少ない状況からでも手軽にキャストできますし、【22-023C】《吟遊詩人》と同様1枚採用のため相手の意識の外から使えることもあってかなり使い勝手のいい1枚でした。

――バックアップについては【21-085H】《ガストラ皇帝》3枚採用が印象的です。やはりブレイクゾーン対策はしっかりやろうという意思の現れでしょうか?

やぶ:それももちろんあります。が、それ以上に「氷雷【VIII】」の足回りを支えるうえでこのカードは重要だと考えていました。特に【21-085H】《ガストラ皇帝》で【カテゴリ(VIII)】のフォワードを手札に確保しておくことで、【22-031H】《スコール》で踏み倒すカードがないという状況を作らないことを心がけてプレイしていました。それ以外にもブレイクゾーンを肥やしやすいことから実質サーチのように働くため、どの局面で引いてもうれしいこともあり、3枚採用しています。

――なるほど。続いてLBカードですが、「氷雷」のLBデッキは「秘められた希望」時点でかなり完成されていた印象ですが、今環境でアップデートされた要素はありましたか?

やぶ:基本的な強みというのは大きくは変わっていませんね。やはり本来対処しにくい【22-075H】《イデア》のようなフォワードでも【22-114H】《ヴィクトラ》+【22-112R】《ザックス》の合わせ焼きで対処できるというのが最大の強みだと思っています。ただ新たな要素として【23-127R】《ニックス》が加わり、不意のEXバーストを踏んでしまったときでも立て直しやすくなったのは明確に進化したところだと思います。


もちろんそういった状況は頻発するわけではないので、使用頻度が高いというわけではないのですが、一度築いた有利を崩さず戦えるのはかなりよかったです。
あとは先ほど話した【22-023C】《吟遊詩人》や【21-037C】《リーパー》にアクセスできる【23-130H】《ルッソ》が地味ながら役立ちましたね。


【23-120R】《クジャ》も序盤にフォワード展開がかみ合わない
場面でごまかしが効くので悪くはなかったのですが、スロットの兼ね合いもあるのでここは3枚目の【22-115R】《サージェス》にしておいてもよかったかもしれません。

――振り返りの余地があるという点では、まだまだデッキに強くなる可能性が残されているのかもしれませんね。大会を通じて印象的だった試合などはありましたか?

やぶ:岐阜大会では自分はたまごまんさんにしか負けていないのですが、この負けが自分のなかで有利だと認識していた「火単」との試合だったことは印象的でした。たまごまんさんのデッキはさいたま大会でKakkaさんやeurekaさんが使っていた【カテゴリ(DFF)】の【21-134S】《バッツ》・【21-127S】《フリオニール》・【21-126S】《クラウド》を採用した形だったと思うのですが、この構築だと「氷雷【VIII】」が前のめりに展開しすぎるとフォワード展開でカウンターされてしまうことに気づかなかったため、試合ではきれいにさばかれてしまいました。

逆に決勝戦ではこちらも一歩引いてバックアップを展開するプランに切り替えて勝つことができたので、非常に意義のある試合だったと思っています。

――それでは最後に、今シーズンに控えている「L3 Championship 2024」や「MASTERS 2024 FINAL」に向けた意気込みなどあればお願いします。

やぶ:岐阜大会は久しぶりに勝ちを掴むことができたので、まずはほっとしています。これを弾みにと言いたいところですが、今のL3構築は自分の好きな「FFVIII」のカードで存分に戦える環境でもあるので、ここから先は楽しむことも大切にしつつ大会に臨んでいければと思います。

――ありがとうございました。

 


◆おわりに
今回は「MASTERS 2024」岐阜大会で優勝されたやぶさんにインタビューを行い、「秘められた試練」環境のメタゲームの一角を担う「氷雷【VIII】」についてお話をうかがいました。

前評判どおりの強さはもちろんのこと、デッキの弱点へとさらに一歩踏み込みしっかりと進化させてきたのは流石の一言です。
今回の結果が「氷雷【VIII】」をさらに前進させたことは間違いないでしょう。次回のL3構築のトーナメントとなる和歌山大会がどのようになるのかも気になりますね。

さて、今週末の「MASTERS 2024」は広島大会と福岡大会が予定されています。「秘められた試練」環境で初のスタンダードでの開催ということもあり、どういったデッキが活躍するのかこちらも今から気になるところです。

現在は「L3 Championship 2024」に向けてL3構築の記事に力を入れていますが、当然スタンダード環境も追いかけていくのでご安心ください!

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!