『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は初となる「L6構築」で行なわれた第26回自宅名人戦で優勝したkakkaさんに、L6構築環境のポイントについてうかがったインタビューをお届けします。
◆はじめに
みなさんこんにちは!『FFTCG』プレイヤーのたるほです。
前回の「隙あらばデッキ語り」、いかがだったでしょうか?
僕なりにL6構築のデッキ作りについて考え、みなさんにお伝えさせていただきました。
そんななか、初のL6構築のトーナメントである「第26回自宅名人戦」が行なわれ、日本代表プレイヤーとしてもおなじみのkakka(閣下/ダンカン、この記事では以降閣下さんとお呼びします)さんが優勝されましたので、この始まったばかりの新フォーマットについてお話をうかがってみました。
L6構築は多くのプレイヤーがまだまだ手探りだと思うので、前回の記事と合わせて、ぜひ環境考察の一助になればと思います。
それではさっそくはじめましょう!
閣下(kakka)
言わずと知れた日本のトップ『FFTCG』プレイヤー。世界的にはダンカンでも知られる。
初のL6構築のトーナメントとなった「第26回自宅名人戦」でも優勝し、その実力を示した。
新フォーマットでの初のトーナメントで、L6構築は王者の目にどう映ったのか?
◆注目は火属性!L6構築の二枚看板!
――優勝おめでとうございます。
閣下:ありがとうございます。
――L6構築では初のトーナメントで、多くのプレイヤーにとって手探りの環境になったかと思います。そんななか閣下さんは「火風【FFTA】」を使い、見事優勝されましたが、今回「火風【FFTA】」を使った経緯を聞かせてください。
●「火風【FFTA】」(「第26回自宅名人戦(L6構築)」優勝)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(24枚) | ||
【8-006L】 | 《クラウド》 | 2 |
【11-017H】 | 《マーシュ》 | 3 |
【11-015L】 | 《ブラスカの究極召喚獣》 | 3 |
【13-129S】 | 《フィリア》 | 2 |
【13-130S】 | 《ランジート》 | 2 |
【13-040L】 | 《シャアラ》 | 3 |
【11-063L】 | 《リッツ》 | 3 |
【13-107C】 | 《ケイト》 | 2 |
【13-108L】 | 《レドナ》 | 3 |
【11-140S】 | 《カダージュ》 | 1 |
バックアップ(18枚) | ||
【8-007C】 | 《黒魔道士》 | 3 |
【10-131S】 | 《エース》 | 1 |
【11-004C】 | 《クー・チャスペル》 | 2 |
【13-006C】 | 《ザンデ》 | 2 |
【11-020C】 | 《リルティ》 | 1 |
【13-014R】 | 《ラーケイクス》 | 1 |
【8-047C】 | 《ウァルトリール》 | 1 |
【11-056R】 | 《フィオナ》 | 1 |
【8–058R】 | 《ノルシュターレン》 | 3 |
【11-053H】 | 《ドネット》 | 3 |
召喚獣(6枚) | ||
【9-017C】 | 《ベリアス》 | 2 |
【10-002H】 | 《イフリート》 | 2 |
【12-002H】 | 《アマテラス》 | 2 |
モンスター(2枚) | ||
【13-011C】 | 《鉄巨人》 | 1 |
【10-045C】 | 《ウンサーガナシ》 | 1 |
閣下:最初はスタンダードで使っている「風氷」をL6構築仕様にチューニングして使おうかと考えていました。
そんなときにDiscordの『FFTCG』公式サーバ上での雑談で、ぱっつぁんさん(※『FFTCG』第二期名人位のプレイヤー)たちと「L6構築はどんなデッキが強いか?」っていう話題になって【13-022H】《シド・ランデル》が強いんじゃないかという仮説が出てきたんです。
L6環境は単体除去を行なえる召喚獣やバックアップが減っていて、たとえば「土雷【イミテーション】」みたいなフォワードで除去をするデッキは【13-022H】《シド・ランデル》の対処がかなり難しいのではないか、というのが着眼点でした。
その上、氷属性には【13-022H】《シド・ランデル》を除去から守れる【13-023R】《シャルロット》もいるので、【13-022H】《シド・ランデル》の生存率を高められます。このように【13-022H】《シド・ランデル》を維持して相手のオートアビリティを縛るデッキはかなり活躍するのでは?という予想が立ちました。
その話をもとに【13-022H】《シド・ランデル》を活かしたデッキを考えてみたんですけど、実際にデッキを形にしてみると、話し合っていたときに期待されたほどの成果は出ませんでした。
理由として、相手のフォワードの動きを縛るためにはなるべく早いターンから【13-022H】《シド・ランデル》を出さなきゃいけないんですが、1ターン目からいきなり【13-022H】《シド・ランデル》を出すようなプレイをすると、万が一除去された場合にコスト面で大きく損をするリスクがあります。
反対にある程度バックアップを展開したり、【13-023R】《シャルロット》を準備してから【13-022H】《シド・ランデル》を出しても、相手のフィールドにはフォワードがすでに並んでしまっています。
フォワードに触る手段がダルや凍結に集中している氷属性では、相手のフォワードを除去して押し返す力が足りないので【13-022H】《シド・ランデル》の持ち味を活かしきるのが難しいなという印象でした。
その弱点を補える相方を探すなかで生まれた「火氷」はかなり可能性を感じさせるデッキでした。火属性は除去が豊富で展開されたフォワードを押し返す力があり、氷属性の短所を補う力があります。
さらに考察を進めるなかで、火属性で氷属性の弱点を補うより、火属性の長所を伸ばしてデッキを作ったほうがいいだろうという結論に至り、いったん【13-022H】《シド・ランデル》から離れてデッキを作る方針に切り替えて調整を進めました。
――環境の軸となる属性の考察が氷属性から火属性に変わったということですね。具体的に火属性の強さはどういったところにあったのでしょう。
閣下:なんといっても【13-129S】《フィリア》という全体除去の存在が大きいです。全体除去の手段が限られるL6構築において、【13-129S】《フィリア》というカードは火属性を使う明確な理由になります。
また【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》も火属性の採用理由となるカードです。10000ダメージを与えるアビリティは、毎ターン相手のフォワードを継続して除去できるだけでなく、選ばれたときにも発動するため仕事をせずにフィールドを離れることがほとんどありません。
L6構築には天敵である【1-107L】《シャントット》がおらず【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》を安全に対処する手段が限られるので、スタンダード以上にポテンシャルを発揮できるカードだと考えました。
この2枚は火属性の除去の主力になるカードで、特に【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》は構築を考える段階で絶対3枚採用しようと考えていました。
また、L6構築のカードプールのなかには、私が日頃から強力だと考えている【8-006L】《クラウド》もいました。
火属性は攻撃力が高いアグレッシブな属性ですが、いわゆるアグロと言われるデッキタイプは決着がつくまでに山札が尽きることが基本的にないため、試合中に一度は【8-006L】《クラウド》を復活させるチャンスがあります。デッキを使い切る心配なく「デッキの残り枚数」をリソースに変えられる【8-006L】《クラウド》というカードがあることが、L6構築においても火属性の強さを支えていると考えています。
――環境における火属性の強さがわかってきたわけですね。そこに風属性が足され「火風」になったのはどういった理由からですか?
閣下:火属性のデッキということで順当に強そうな「火単」などはデッキ候補の筆頭でしたが、「Opus XIII」では【13-040L】《シャアラ》や【13-108L】《レドナ》といった「火風」向けの新要素が追加されました。これまでの「自宅名人戦」ではこの2枚を活かしたデッキを見かけていなかったこともあり、それなら自分で試してみようという思いから今回は「火風【FFTA】」で参加しようと決めました。
「火風【FFTA】」もスタンダード環境のデッキの1つですが、L6構築のカードプールにはバックアップ展開の要となる【8–058R】《ノルシュターレン》や【カテゴリ(FFTA)】の【11-053H】《ドネット》、【8-007C】《黒魔道士》と役者がそろっているので、スタンダードと使用感はさほど変わらないだろうという確信もありました。
――L6構築ということで当然スタンダードと違う点も出てくるかと思いますが、環境を意識して採用したカードはありますか?
閣下:さきほど話したとおり、【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》は絶対3枚採用しようと考えていました。
L6構築のカードプールでは【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》に対してクリティカルな除去がかなり少なくなっているので、ほぼ確実に相手のフォワードを2体以上除去してくれます。
こちらが除去されるリスクが低いからこそ、1体目を倒した後の2体目3体目が活きてくるので、この3枚採用は相手にとってかなりのプレッシャーとなるはずです。
また【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》を使ううえで、パワーを上げられるカードは意識しました。特に【9-017C】《ベリアス》は火属性同士の対戦でキーカードとなります。
最初話したとおり、L6構築における火属性の除去の主力は【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》と【13-129S】《フィリア》で間違いありません。
この2枚はどちらもパワーが10000で、与えるダメージも10000という共通点があります。
【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》対【13-129S】《フィリア》はL6構築でもよく見るシチュエーションなので、デッキ構築の段階で意識しておくことが重要です。
【9-017C】《ベリアス》で【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》や【13-129S】《フィリア》のパワーを11000にすることで、【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》を倒しにきた【13-129S】《フィリア》からのダメージにも耐えたり、反対に【13-129S】《フィリア》にダメージを与えるためにアタックしてきた【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》の10000ダメージを耐えながら、先制攻撃で返り討ちにすることもできます。
自分の【13-129S】《フィリア》が【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》を巻き込まないようにするという使い方もできるので、【9-017C】《ベリアス》が持てる役割はとても多いです。
各属性に【10-015R】《モーグリ-1組-》のようにそれぞれの属性のパワーを上げる【ジョブ(モーグリ)】もいるので、これ以外のシーンでも【9-017C】《ベリアス》が輝くシーンは多いでしょう。
――【9-017C】《ベリアス》は環境上かなり重要なカードになりそうですね。そういえば召喚獣を回収できる【10-132S】《ティナ》は入っていないですね。
閣下:正直に言ってしまうと作ったとき入れるのを忘れていたんですが、このままでもいいかと思ったので構築したときのままで参加しました(笑)。
入れ替えるとしたら【13-107C】《ケイト》と枠を争うことになると思いますが、どちらにもよい点があるので好みのレベルかなと思います。
さらに、構築内容について言ってしまうと【12-002H】《アマテラス》も他のデッキで使っていて手元にあった2枚だけを採用したので、本来であれば3枚採用すべきだったと考えています。
今回はお試しということで、明確に採用枚数などを詰め切ってはいませんが、こうしたカードの採用枠も今後のデッキの伸びしろかとは思っています。
――それ以外にL6構築で注目して採用してみたカードはありますか?
閣下:【13-014R】《ラーケイクス》はかなり手応えを感じる1枚でした。1コストのバックアップながら相手のフォワードを除外でき、ダメージによる除去ばかりだった火属性には今までなかった、新しいアプローチのカードです。eurekaくん(※関東で活躍する外国人プレイヤー)との対戦のときも、火属性では今まで対処が難しかった【8-068L】《アーデン》を対処してくれるなど、しっかりと活躍してくれました。
恥ずかしながら構築段階で気づいてなかったんですが、【カテゴリ(FFCC)】なので【8–058R】《ノルシュターレン》からもサーチできるんですよね。
もちろん強いだけでなく自らアクティブになれないデメリットもあるので、今回の【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》のような奇数コストのカードを主軸にするときは、デッキのバランスを見ての採用になるかとは思いますが、【11-063L】《リッツ》でアクティブにしたり、【9-014L】《ネール》のアビリティのコストにするなど工夫次第でデメリットを帳消しにして運用することもできます。
これまで火属性が苦手としてきたカードにも対処できるカードとして、今後はL6構築だけでなくスタンダードでも活躍していくカードなんじゃないかな?と感じています。
――僕が気になったのは【8–058R】《ノルシュターレン》があるうえで【11-004C】《クー・チャスペル》を2枚採用していることなんですが、相当重要なカードということでしょうか?
閣下:ここもぶっちゃけてしまうと【カテゴリ(FFCC)】と知らず2枚採用しちゃったんですよね(笑)。
――閣下さん見逃し多くないですか?(笑)
閣下:ふっふっふ(笑)。
――とにかく、それはさておいても2枚採用するだけ価値があるカードだったと?
閣下:そうですね。繰り返しになりますが、とにかく【13-129S】《フィリア》が強い環境なので、ダメージを軽減されなくする【11-004C】《クー・チャスペル》はメタゲーム上でも重要なカードかなと。
このデッキには【13-006C】《ザンデ》や【8-006L】《クラウド》と組み合わせて除去するカードも多く入っているので【11-004C】《クー・チャスペル》があれば【13-129S】《フィリア》を倒せるタイミングがかなり多いんですよね。
――なるほど。ちなみここは変えとけばよかったなみたいな枠はありました?
閣下:対戦していて思ったのが【11-140S】《カダージュ》は【10-127H】《シトラ》にしておくべきだったということですね。
スタンダードと同じくL6構築でも「土水【ソフィ】」はメタゲームでも上位に入るであろうデッキで、【12-068H】《フェンリル》はほぼ採用されていると見て間違いないので、そこに隙を与えてしまう【11-140S】《カダージュ》はデッキの弱点になってしまうなと。
【10-127H】《シトラ》であれば、ブレイクされても実質1CPの損で済みますし、召喚獣とモンスターを回収できるのもデッキと合っているので、ここは反省しているところですね。
◆閣下さんのL6構築の振り返りとこれから
――今回初めてのL6構築でしたが、実際に遊んでみていかがでしたか?
閣下:デッキ構築やプレイ感に関しては普段のスタンダードとそこまで大きく変わったと感じた点はありませんでした。デッキに採用したカードも、私が強いと感じたカードを順番に採用していっただけですし。
ただ、このデッキの【13-014R】《ラーケイクス》のように、スタンダードのときに見逃していたカードを再発見できたのは、L6構築に挑戦した大きな収穫だったと思います。
今回の大会で特に驚いたのは、対戦相手の方が使っていた「風水【空賊】」デッキで、なかでも【13-048H】《バルフレア》がこちらの【12-002H】《アマテラス》をアクションアビリティによるパワー上昇で耐えてきて「やられたな」と感じました。
――「風水【空賊】」は確かに気になりますね。今後の環境や活躍しそうなデッキの展望などありましたか?
閣下:基本的に「Opus XIII」環境のL6構築は、スタンダードのデッキの動向に注目していくことになると思います。現時点では、スタンダードで出てきたデッキがL6構築に落とし込めるかというのがL6構築の環境を左右すると考えているので。
スタンダードに比べてトーナメントシーンに残るデッキの種類は限られますが、その分それぞれのデッキや相性をしっかり把握することが重要なゲームになります。
スタンダードからL6構築に対応させたとき、どのデッキがメタゲームに耐えうるデッキパワーの水準を保てているかを正しく判断する必要がありますね。
「Opus VIII」が使えなくなる「Opus XIV」発売のタイミングでは今回使った「火風【FFTA】」もデッキの重要パーツが軒並みカードプールから消えてしまうため、ターニングポイントになると思います。
こうしたタイミングで動向を見極めつつデッキを用意していくことが、L6構築のポイントになっていくかと思います。
――ありがとうございました。
◆おわりに
今回は、初のL6構築で開催された「第26回自宅名人戦」で優勝した閣下さんにインタビューを行ないました。新フォーマットながら、一貫したメタ考察で優勝する閣下さんからはいつもどおりの貫禄を感じましたね。
次回の「第27回自宅名人戦」は5月23日(日)、スタンダードでの開催となります。(受付は当日12:45まで)
こちらも優勝者インタビューをお届けする予定なので、ぜひお楽しみに!
イベント会場となる『FFTCG』公式Discordサーバーはこちら!
それではまた次回の記事でお会いしましょう!