『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週はライターのたるほさんが海外のトーナメントで結果を残したスタンダードのデッキを紹介します。
◆はじめに
みなさん、こんにちは!
『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。
「英雄の夜明け」環境も中盤に差しかかり、スタンダード・L3構築ともに主要なデッキが出そろってきました。
この連載でもトーナメントの最前線で活躍しているデッキを紹介してきましたが、今週は海外の地域ごとの選手権(世界選手権予選)で結果を残しているデッキを取り上げたいと思います。
日本と海外では大会形式や流行りのカードが異なることも多いため、そのままコピーして日本の大会に持ち込んでOK! というわけではありませんが、結果を残しているデッキには参考になる部分がきっとあるはずです。
今回はそんな海外のトーナメントシーンから、僕の気になるデッキをいくつかピックアップしたので個人的な目線で考察・解説していきたいと思います。
「日本選手権 2023 Autumn」最後の予選となる東京大会、そしてその翌週に控える「JAPAN CUP 2023」の参考に、ぜひお楽しみください。
◆欧州を制した注目の新デッキ、「風土【キャスト】」
最初に紹介するのは、9月16-17日にロンドンで開催された「European Championship 2023」で優勝した「風土」です。
●デッキリスト「風土」(「European Championship 2023」優勝 フォーマット:2デッキ・スタンダード)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(20枚) | ||
【14-057H】 | 《ローザ》 | 2 |
【16-135S】 | 《ルールー》 | 3 |
【16-048H】 | 《ジタン》 | 3 |
【20-056H】 | 《ベル・ダット》 | 2 |
【17-063R】 | 《ルッソ》 | 3 |
【12-061L】 | 《クルル》 | 3 |
【15-083L】 | 《リディア》 | 2 |
【10-074C】 | 《スズヒサ》 | 1 |
【18-119C】 | 《チェリンカ》 | 1 |
バックアップ(14枚) | ||
【8-058R】 | 《ノルシュターレン》 | 3 |
【19-046C】 | 《ダチ》 | 2 |
【13-043C】 | 《スティルツキン》 | 1 |
【11-072R】 | 《デシ》 | 3 |
【14-067H】 | 《シャントット》 | 2 |
【6-067R】 | 《エピタフ》 | 1 |
【11-073H】 | 《テテオ》 | 1 |
【1-103C】 | 《キマリ》 | 1 |
召喚獣(14枚) | ||
【10-055H】 | 《チョコボ》 | 3 |
【2-049H】 | 《アスラ》 | 2 |
【12-039C】 | 《アレキサンダー》 | 2 |
【17-053R】 | 《チョコボ》 | 2 |
【9-068H】 | 《ドラゴン》 | 2 |
【10-068C】 | 《クーシー》 | 3 |
モンスター(2枚) | ||
【16-043H】 | 《アトモス》 | 2 |
このデッキには【17-063R】《ルッソ》・【14-057H】《ローザ》・【15-106C】《アトモス》といったカードや、ドロー力の高い【12-039C】《アレキサンダー》・【17-053R】《チョコボ》などの召喚獣が採用されています。
これらの採用カードから、基本的には風属性のキャストギミックを主軸として戦うデッキであることがうかがい知れます。
ですが単なるキャストデッキに留まらないのが、このデッキのすばらしいところです。
従来のキャストデッキがキャストギミックによって得た膨大なリソースで相手を圧倒して勝つことを目的とするのに対して、この「風土」は対戦相手のデッキ切れを狙うというもう1つの勝ち筋を用意しています。
デッキ切れによる勝利を狙う大きなメリットとして、対「水単」のような除去コントロールとのマッチアップに強くなるということが挙げられます。
従来の「風単」対「水単」のマッチアップは、基本的に「風単」側が優勢であるものの、「水単」の除去を上回るよう展開するために「風単」がリソース確保に走った結果、盤面では有利だった「風単」がデッキ切れで負けてしまうという展開が少なくありませんでした。デッキ切れのプランを持つことで対コントロールとのマッチアップが安定するようになっています。
リソース差による勝利とデッキ切れによる勝利、両方に貢献してくれるのが「英雄の夜明け」の新カード【20-056H】《ベル・ダット》です。
デジョン — 2を持つ【20-056H】《ベル・ダット》は自身からデジョンカウンターが取り除かれるたび、対戦相手のデッキを2枚ブレイクゾーンに置くオートアビリティと、フィールドに出たとき対戦相手のブレイクゾーンのフォワードを除外し、それをキャストできるようになるオートアビリティを持っています。
対戦相手のデッキを減らしこちらがキャストできるというギミックは同じくデッキに採用されている【16-048H】《ジタン》と役割の近いものになりますが、非公開領域のカードを奪うランダム性の高い【16-048H】《ジタン》と違い、フォワード限定ではあるものの任意のカードを使用できる【20-056H】《ベル・ダット》には独自の強みがあります。
【20-056H】《ベル・ダット》で選べない召喚獣に対しては【12-061L】《クルル》の採用で解決を図っている点もコンセプトが一貫している印象です。
【20-056H】《ベル・ダット》や【12-061L】《クルル》で選んだカードをキャストするための手段として、相手と同じ属性のCPを出せる【1-103C】《キマリ》を採用しているのもこのデッキの構築のすばらしいポイントです。
【12-061L】《クルル》と【1-103C】《キマリ》をセットで運用するというアイデアは、【12-061L】《クルル》が収録された「Opus XII」のリリース当初からあったものですが、【19-046C】《ダチ》の登場でサーチが可能になり、【20-056H】《ベル・ダット》により【12-061L】《クルル》以外にも採用するメリットのあるカードが追加されたことで、現実的なレベルのアイデアに昇華されています。
そのほかにもデッキ全体で召喚獣のコストが低めであることから【15-083L】《リディア》が自身で得た成長カウンターのみで動けるようになり、それがさらにキャスト数の積み増しを支えている点など、細部まで構成が煮詰められており、まさに優勝すべくして優勝したデッキと言って差し支えないほど完成度が高い構築だと感じています。
その一方で、【1-107L】《シャントット》ではなく【14-067H】《シャントット》を採用するなど、自身のデッキを回すことに徹底した構築である点は2デッキ・スタンダードというフォーマットだからこその選択であるとも感じています。特に日本では「火雷【XIII】」や「氷雷」といったアグロ~ミッドレンジ帯のデッキも多く、単一のデッキでこれらを相手取らなければならないため、もし国内のトーナメントで使用を検討する場合は、もうひとひねり速いデッキへの対策が必要になるだろうと考えています。
◆長い進化の末、ついに大成した新型「雷単」
次に紹介するのは、9月9-10日にロサンゼルスで開催された「North American Continental Championship 2023」で上位に入賞したデッキから「雷単」です。
●デッキリスト「雷単【カオスアーク】」(「North American Continental Championship 2023」11位 フォーマット:2デッキ・スタンダード)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(20枚) | ||
【10-098L】 | 《フォルサノス》 | 1 |
【17-096H】 | 《黒衣の男》 | 3 |
【20-086H】 | 《アリゼー》 | 3 |
【16-090R】 | 《シーモア》 | 1 |
【16-100L】 | 《ヤ・シュトラ》 | 3 |
【20-090H】 | 《グ・ラハ・ティア》 | 3 |
【12-004R】 | 《アルフィノ》 | 2 |
【5-068L】 | 《ヤ・シュトラ》 | 1 |
【16-129L】 | 《カオス》 | 3 |
バックアップ(15枚) | ||
【10-138S】 | 《ラムザ》 | 1 |
【13-077C】 | 《ゼムス》 | 1 |
【17-094C】 | 《ガリークランのシド》 | 1 |
【20-105C】 | 《リーブ》 | 1 |
【1-150R】 | 《ルールー》 | 1 |
【5-120C】 | 《ルイゾワ》 | 1 |
【19-084R】 | 《リチャード》 | 1 |
【6-086H】 | 《アレシア・アルラシア》 | 2 |
【19-076R】 | 《クジャ》 | 1 |
【20-095C】 | 《裁縫師》 | 3 |
【20-098R】 | 《チャドリー》 | 2 |
召喚獣(15枚) | ||
【17-090R】 | 《イクシオン》 | 3 |
【20-103H】 | 《ラムウ》 | 3 |
【15-101R/6-102R】 | 《ラムウ》 | 3 |
【15-090H】 | 《オーディン》 | 3 |
【19-105H】 | 《アーク》 | 3 |
海外のトーナメント結果を見てきたなかで、もっとも印象的だったのがこの「雷単」でした。
デッキの根幹となるのは【16-129L】《カオス》+【19-105H】《アーク》による強力なコントロールパッケージです。
高コストの闇属性フォワード+【19-105H】《アーク》のパッケージは前環境から活躍しており「雷単」以外にも「水単」「土雷」「風単」などさまざまなデッキに、2枚で完結するコンボとして搭載されていました。
「雷単」でこのコンボを搭載するにあたって輝くカードが【6-086H】《アレシア・アルラシア》です。
コスト効率の面では【19-068R】《リディア》などにやや劣るものの、任意のタイミングでキーカードである【19-105H】《アーク》をサーチでき、手札で余ってしまった【19-105H】《アーク》を捨てて別の召喚獣に変換することもできるため、コンボの安定性を高めつつ、闇属性を多用するリスクを軽減してくれます。
サーチ対象となる召喚獣もアグロ耐性を高められる【17-090R】《イクシオン》や、モンスターの除去が可能な【15-101R/6-102R】《ラムウ》など、種類が豊富です。
加えて【17-096H】《黒衣の男》の存在により、これらの召喚獣の再利用も容易と、もともとポテンシャルの高さがあるデッキでした。
その反面、前環境の時点では【カオスアーク】のコンボと【17-096H】《黒衣の男》以外にアドバンテージを獲得する手段が乏しく、フォワードのバリューが一歩及ばない印象でした。しかし「英雄の夜明け」の登場によりこの課題が大きく改善されています。
新戦力となったのは【20-086H】《アリゼー》と【20-090H】《グ・ラハ・ティア》、そしてそれにより万能サーチカードへ昇格した【12-004R】《アルフィノ》です。
【12-004R】《アルフィノ》は、アビリティや召喚獣によってフィールドに出たときキャラクターをサーチするオートアビリティを持つフォワードで、登場以来さまざまな手段でフィールドに出すことが試みられてきたカードですが、どのデッキでも2種類以上の踏み倒しを用意することは難しく、なかなかその真価を発揮させることができませんでした。
ですが今回、ブレイクゾーンから出せる【20-086H】《アリゼー》とデッキから出せる【20-090H】《グ・ラハ・ティア》が登場したことで【12-004R】《アルフィノ》の使い勝手がグンと向上しました。
【12-004R】《アルフィノ》を介してのサーチ性能が向上したことで、前述の【6-086H】《アレシア・アルラシア》のような従来サーチしづらかったキーカードも安定して手札に加えやすくなり、コンボデッキの強さを1つ上のステージに押し上げる高い安定性を手にしたというのが「英雄の夜明け」で「雷単」が得た大きな変化と言えるでしょう。
また【20-086H】《アリゼー》と【20-090H】《グ・ラハ・ティア》の登場によって強化を受けたカードは【12-004R】《アルフィノ》だけに留まりません。【16-100L】《ヤ・シュトラ》は対戦相手のフォワードを【ジョブ(暁の血盟)】のフォワードの数×4000パワーマイナスするアビリティを持ち「水雷【レオ】」などに採用されることもあったカードでしたが、これまでのデッキは【16-100L】《ヤ・シュトラ》の登場までに2アクション以上必要なケースが多く、またデッキに採用される【ジョブ(暁の血盟)】の種類の少なさから除去できるフォワードの範囲に限界がありました。
しかし【20-086H】《アリゼー》と【20-090H】《グ・ラハ・ティア》によりタイムラグなく除去が可能になり、採用される【ジョブ(暁の血盟)】が豊富になったことで確実に相手の主力フォワードを除去できるだけのポテンシャルを手にしています。スペシャルアビリティ「生命の波動」は破格のパフォーマンスで全体除去が可能で、これもまた雷属性に不足している要素を補ってくれています。
今回紹介しているデッキでは風属性の【5-068L】《ヤ・シュトラ》まで採用していますが、これは僕がこのデッキでもっとも感銘を受けたカードです。前述の【16-100L】《ヤ・シュトラ》のスペシャルアビリティの弾としての働きはもちろん、【16-129L】《カオス》+【19-105H】《アーク》のコンボを安全に実行するためのサポートとしても活躍する、まさにマスターピースと言えるカードだと感じました。
このほかにも「英雄の夜明け」では【20-095C】《裁縫師》のような単属性デッキを強化するカードが登場しています。このバックアップはサイクルで各属性に配られていますが、【20-090H】《グ・ラハ・ティア》のパワーを底上げできる【20-095C】《裁縫師》は同サイクルのカードの中でもデッキにもたらす恩恵が大きなものとなっています。それを自然に活かせるのも「雷単」の強みになっています。
◆おわりに
今回は海外のトーナメントから、僕が特に注目しているデッキを2つ紹介してきました。
これらに限らず海外では日本で未開拓なタイプのデッキも多く、環境終盤に向け参考になることが多いです。
今週末には「日本選手権 2023 Autumn」最後の予選大会となる東京大会が控えていますが、「JAPAN CUP 2023」の前哨戦として、海外で活躍するデッキを試す場として活用してみるのもいいかもしれませんね。
さて、次回は開催までまもない「JAPAN CUP 2023」に向けた総まとめとして、環境考察記事をお届けしたいと思います。
これまで紹介してきたデッキから、「日本選手権 2023 Autumn」東京大会で活躍した最新デッキまで総ざらいしていこうと思いますのでお楽しみに!
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!