『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今回は昨年12月に開催された「世界選手権2024」から、配信には映らなかった好ゲームのカバレージをお届けします。
◆はじめに
皆さん、こんにちは。『FFTCG』公式記事連載の編集担当で『FFTCG』プレイヤーのゆばと申します。
ここでは昨年12月に開催された「世界選手権 2024」より、公式の生配信には乗らなかった対戦のテキストカバレージをお届けします。
世界を代表するプレイヤーによって行なわれた熱戦の模様を、配信アーカイブとともに楽しんでもらえればと思います。
今回取り上げるのは決勝ラウンド・ウィナーズトーナメントの1回戦、日本代表の冷麺(Fujikawa T.)選手と、二度のワールドチャンピオンという前人未到の偉業を成し遂げている強豪・Alex(Alexander H.)選手のゲームです。
◆世界選手権 2024 決勝トーナメント・ウィナーズブラケット1回戦 冷麺 対 Alex
「世界選手権 2024」2日目、ここからダブルエリミネーションでの決勝トーナメントとなる。1日目の上位8名のプレイヤーはまずウィナーズトーナメントに配置され、勝利したプレイヤーはそのまま進み、負けたプレイヤーはルーザーズトーナメントへと移動する。そのルーザーズトーナメントで敗北すると決勝トーナメントから敗退してしまうことになる。最終的にウィナーズトーナメントの代表者とルーザーズトーナメントの代表者でグランドファイナルが行なわれ、世界王者を決定する仕組みだ。
そんな決勝トーナメントから、日本代表として初めて世界選手権に挑んだ冷麺選手と、二度の世界選手権優勝を果たしているAlex選手(以下、ともに敬称略)のマッチアップをお届けする。
デッキは冷麺が「騎士」と「水単レオ」、Alexが「風単」と「火水コスト3WoL」だ。
第1ゲーム。予選ラウンドで上位だったAlexが先攻を獲得し、両者マリガンはなし。Alexのファーストアクションは【16-055C】《チョコボ・サム》から【4-064L】《デブチョコボ》をサーチする上々の立ち上がり。
対して冷麺はこちらも【16-042R】《ラスウェル》、【22-097L】《クリルラ》という攻守のエースがそろった初手からまずは【16-042R】《ラスウェル》でバックアップを凍結させ、次ターンのアクションを咎めていく。
奇数コストのカードが使いにくくなったAlexはサーチしてきた【4-064L】《デブチョコボ》をコストに【8-058R】《ノルシュターレン》。【13-043C】《スティルツキン》をサーチして即座にキャストし【24-052L】《ベルゲミーネ》をサーチ。「秘められた伝説」で登場した風属性期待の新カードだ。しかし、ここではこれをコストに当てての【16-048H】《ジタン》。3キャストによりヘイストを得て、フィールドに出て即アタック、オートアビリティにより冷麺のデッキから【18-015R】《ラムザ》と【13-023R】《シャルロット》を奪い取る。ダメージでめくれたのは【13-111C】《ディリータ》。
ターンを迎えた冷麺はまず【16-042R】《ラスウェル》でアタック。【22-110L】《シトラ》がダメージへ。続けて【22-097L】《クリルラ》をキャスト。【12-126R】《ガウェイン》がめくれてサーチは【22-006H】《ガーランド》と【12-103H】《ベアトリクス》。さらに【22-092C】《アグリアス》で【16-048H】《ジタン》を手札に戻し、ターン終了時の【16-042R】《ラスウェル》による手札破壊でこれを捨てさせる。
手札もなく、盤面も凍結されているAlexは先ほど盗み取った【13-023R】《シャルロット》をキャストしてターン終了。
これに対して冷麺は【22-006H】《ガーランド》、そしてLBデッキから【23-128R】《ベアトリクス》。これで【13-023R】《シャルロット》を除去し、一気に4ダメージを与える。
この猛攻を受けて、Alexは次のターンで投了。
冷麺がスピーディーに1勝をもぎとったかたちだが、ここまではお互い織り込み済みなのだろう。冷麺は表情を崩さず、Alexにも落胆はなさそうだ。
第2ゲーム。再び先攻のAlexは「風単」を続投させ、勝利したデッキはもう使用できないため冷麺は「水単レオ」にシフトする。
両者またもマリガンなくゲームが始まり、Alexのファーストアクションは【6-058R】《モーグリ [XI]》。冷麺は【5-165S】《ラーサー》と【4-138R】《メルウィブ》でバックアップをそろえつつ手札に【12-124L】《サンクレッド》を招き入れる。
続くターン、Alexは【4-064L】《デブチョコボ》から【12-048R】《チョコラッテ》、さらに0コストになった【20-095C】《裁縫師》と一気にバックアップを4枚に加速する。
「風単」にとって面目躍如の動きだが、これに対して冷麺もパワフルなアクションで応じる。
まずは【11-124H】《リルム》。小考ののち【23-096C】《アプカルル》と【16-043H】《アトモス》をサーチ。さらに【22-081R】《ディアナ》でコスト1から6までのキャラクターをフィールドにそろえつつ【16-126R】《レオ》をサーチし、キャストする。
これが2枚目の【12-124L】《サンクレッド》を導き、さらにブレイクゾーンから【19-128L】《ウォーリアオブライト》を復活させる。火風土水という多属性ぶりにより【16-082H】《モント・リオニス》や【18-131S】《イドラ》などのさまざまな「特定の属性のフォワードをフィールドに戻す」効果で出てくることも多い【19-128L】《ウォーリアオブライト》だが、主に水雷で運用される【12-124L】《サンクレッド》ともシナジーがあるとは、恐ろしいカードだとあらためて感じさせる。
2ターン目にしてフォワード4枚、バックアップ3枚、モンスター2枚と圧倒的な戦列を並べて見せた冷麺だが、これに対して先ほどのゲームではコストにされてしまった新カード【24-052L】《ベルゲミーネ》がその真価を発揮する。
Alexはまず【16-043H】《アトモス》を設置し、続いて【6-058R】《モーグリ [XI]》で「引き出す」。持ってきたのは【19-035R】《アレキサンダー》。そして【2-049H】《アスラ》でブレイクゾーンの【24-052L】《ベルゲミーネ》を手札に戻してキャスト。
そして0コストになった【19-035R】《アレキサンダー》で冷麺の重要なエンジンである【16-043H】《アトモス》をブレイクしつつ、【24-052L】《ベルゲミーネ》のアビリティで【11-124H】《リルム》を除去。そしてこちらも新カードの【24-038H】《ヴァルファーレ》を追加コスト0でキャスト、これにより【24-052L】《ベルゲミーネ》のさらなるアビリティが発動し、【16-126R】《レオ》・【12-124L】《サンクレッド》・【19-128L】《ウォーリアオブライト》をデッキに追い返す。Alexのビッグアクションを見届けた冷麺は【21-121L】《ウォーリアオブライト》で【24-052L】《ベルゲミーネ》を除去しておく。
盤面を一瞬で更地にされてしまった冷麺は、まず【23-096C】《アプカルル》。手札を補充しつつLBデッキから【23-130H】《ルッソ》。【21-109C】《占星術師》をサーチしてキャスト、【13-093H】《サラ》・【17-110C】《クゥダフ》・【18-100L】《レナ》の中から【13-093H】《サラ》を手札に加えてリカバリーの態勢を整える。
それに対してAlexは鋭く攻勢を仕掛ける。【22-110L】《シトラ》でデッキから【2-049H】《アスラ》をキャストし、【6-058R】《モーグリ [XI]》を回収して再び「引き出す」。これで【16-048H】《ジタン》を持ってきてキャストしアタック。冷麺のデッキトップから【18-100L】《レナ》と【18-086H】《アーシェ》を奪い取る。
貴重なアタッカーを盗まれてしまった冷麺は【21-109C】《占星術師》のアビリティでドロー。そして【12-124L】《サンクレッド》で【18-100L】《レナ》を復活させる。だがブレイクゾーンには水属性のカードが足りず、さらなる戦力の復活までは叶わない。
冷麺のアクションを見定めたAlexはLBデッキから【22-116L】《エース》。全体にダメージを与えてパワー5000の【23-130H】《ルッソ》を除去。さらに【16-048H】《ジタン》でアタックして【6-108R】《イシュガルド教皇》を奪い、冷麺はこれを【12-124L】《サンクレッド》と相打ちさせる。
次のターンを迎えた冷麺はパス。ダメージはまだかさんではいないものの、このままでは【22-116L】《エース》によってリソース差をつけられていってしまう苦しい状態だ。
そんな冷麺をAlexは追撃する。【16-135S】《ルールー》で【2-049H】《アスラ》を回収し、再び【6-058R】《モーグリ [XI]》が「引き出す」。もちろんサーチ先は【16-048H】《ジタン》。これが今度は【17-091L】《エクスデス》を奪い去ってしまう。
度重なる盗賊の襲来により、もはやリソースの勝負では逆転不可能と判断した冷麺がここで投了。勝負最終の第3ゲームに持ち込まれることとなった。
第3ゲーム。冷麺は引き続き「水単レオ」、Alexは「火水コスト3WoL」にデッキチェンジ。
両者ともにマリガンはなし。ここまで3ゲームすべてマリガンがないあたり、両者のデッキの安定性の高さがうかがえる。
先攻の冷麺はまず【15-116C】《ヒルダ》で手札を整える静かな立ち上がり。
対するAlexは、バックアップを出さず手札3枚をコストに【21-010H】《タイヴァス》。【18-130L】《フリオニール》をサーチしつつ、【21-010H】《タイヴァス》のアビリティで【17-124H】《モグ [VI]》を出す。
アビリティによってサーチを禁止する【17-124H】《モグ [VI]》は、サーチとドローで【16-126R】《レオ》の条件を整えていく「水単レオ」にとって天敵とも呼べる存在。事実、冷麺は自身の日本代表入りを決める戦いとなった「MASTERS 2024 FINAL」でも「水単レオ」に対して出されたこのカードに苦しめられた経験がある。苦い記憶の払拭なるか。
ともかくもターンが返ってきた冷麺は【12-082R】《ディアナ》。Alexは【17-124H】《モグ [VI]》でこのターンのサーチを禁止する。冷麺は続くアクションなくターン終了。
Alexは、今度は手札4枚を使って【21-121L】《ウォーリアオブライト》。これが【21-004L】《カイエン》と【22-108H】《レナ》を戦場に連れ出して1ドロー。さらにスタックで再び【21-010H】《タイヴァス》のアビリティから【17-124H】《モグ [VI]》。徹底的に冷麺のサーチアクションを妨害していく。【17-124H】《モグ [VI]》のドローまで見たところで【21-004L】《カイエン》でクリスタルを得るか考えるが、ここではCPを支払わないことを選択する。
上手なプレイヤーにとっては当たり前なのかもしれないが、スタックを活用してなるべく多くの情報を得てから結論を出す、こういう細かいところも好プレイだと感じた。
Alexは【21-010H】《タイヴァス》でアタックし1ダメージ目を刻む。しかし、ここで【6-108R】《イシュガルド教皇》がめくれ【16-126R】《レオ》を冷麺にもたらす。
ターンが回ってきた冷麺は【5-165S】《ラーサー》。これでコスト3、4、6のキャラクターがフィールドに。続けてLBデッキから【22-120H】《クラウド》。【17-124H】《モグ [VI]》を除去しようとするが、これに対してAlexは【21-121L】《ウォーリアオブライト》の「アルティメットシールド」で応じる。
続くターン、Alexのフィールドにはフォワードが5体いるものの【21-010H】《タイヴァス》と【19-128L】《ウォーリアオブライト》以外はパワーが低く【22-120H】《クラウド》を突破できない状態だ。しかし今の『FFTCG』にはLimit Breakがある。LBデッキからの【22-115R】《サージェス》で【22-120H】《クラウド》をダルにしてアタックしていく。
5体のアタックでダメージ6点という絶体絶命の状況に追い込まれたものの、冷麺は2点目で【12-082R】《ディアナ》、4点目で【6-108R】《イシュガルド教皇》、6点目で【18-102C】《ワッカ》がEXバーストし、【16-126R】《レオ》や【14-102L】《海神リヴァイアサン》などで手札を大量に補充する。
大ピンチながらもリソースは増えた冷麺。充実した手札からまずは【18-100L】《レナ》。そしてLBデッキから【23-129H】《ルナフレーナ》。EXバーストを持つカードこそめくれなかったが【11-114R】《サハギンチーフ》が手札に。
続いての【11-124H】《リルム》に対してAlexは【17-124H】《モグ [VI]》で対抗、サーチを禁止しコスト1、2のモンスターを出させず【16-126R】《レオ》にたどり着かせない。ならばと冷麺はブレイクゾーンから【14-102L】《海神リヴァイアサン》を復活させる。【22-115R】《サージェス》を除去し、さらにオートアビリティで【21-010H】《タイヴァス》も退ける。
だいぶ盤面を押し返されたAlexだがあと一押し、あと1ダメージで勝てる状況なのも事実。そして押し切るのに最適なカードが現れる。【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》だ。
ブレイクゾーンはまだ6属性なため3回アタックこそできないものの、パワー8000ヘイストブレイブ先制攻撃+ダル凍結で冷麺に襲いかかる。冷麺はまず【11-124H】《リルム》でブロック、続く【19-128L】《ウォーリアオブライト》のアタックには【23-129H】《ルナフレーナ》を差し出す。残るフォワードには【22-120H】《クラウド》がにらみをきかせる。
生きてターンを迎えた冷麺は【12-124L】《サンクレッド》で【17-091L】《エクスデス》を復活させる。これでブレイクゾーンを一挙に除外し【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》を弱体化させる。【14-102L】《海神リヴァイアサン》でアタックし、Alexは【21-004L】《カイエン》でブロックする。
返すターン、Alexは【21-121L】《ウォーリアオブライト》でアタック、冷麺は【17-091L】《エクスデス》によってアビリティが使いにくくなった【18-100L】《レナ》をブロックにあてる。
次のターン、冷麺はまず【12-124L】《サンクレッド》でアタック、アタック時の除去能力は「アルティメットシールド」で防がれ【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》に打ち取られてしまう。続けてLBデッキから【24-119R】《ギルガメッシュ》。さらにターン終了時に【17-091L】《エクスデス》の除外能力が発動、Alexは【22-108H】《レナ》を除外する。
【21-121L】《ウォーリアオブライト》と【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》だけの盤面となったAlexはパスし、ターンを終える。
【17-091L】《エクスデス》を筆頭に、フォワード4体を擁する冷麺だが、まだ1ダメージも与えられていないためすぐさま勝利とはいかない。ここは再度【12-124L】《サンクレッド》をキャストし、【19-128L】《ウォーリアオブライト》を復活させて攻めていく。【17-091L】《エクスデス》のアビリティにより、いよいよAlexの盤面は【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》のみに。
そうして迎えたAlexのターン、2枚のカードを引いたAlexはここで【21-010H】《タイヴァス》! これで【18-107L】《アクスター》をサーチする。
そして【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》でアタックを宣言、ブロックするフォワードの指定前に【21-010H】《タイヴァス》で【18-107L】《アクスター》をフィールドへ。これにより冷麺のすべてのフォワードがダル、凍結される。遮るもののなくなった戦列を【14-023L】《ギルガメッシュ [FFBE]》が駆け抜け、劇的な逆転勝利を収めたのだった。
決着後、冷麺に話を聞くと、プレイミスがあったのだと言う。最終ターンの1つ前、【12-124L】《サンクレッド》で【19-128L】《ウォーリアオブライト》を復活させたのがミスであり、あのシーンでは攻め急ぐのではなく【11-124H】《リルム》を復活させて【7-110C】《サハギン》をサーチし、フォワードをアクティブにできるようにしておくべきだったのだそうだ。
たった1ターン、たった1枚のカード選択によって勝敗が揺れ動くタイトなゲームだったが、2023年の世界王者であるAlexがその貫録を見せつけ、ウィナーズトーナメントを勝ち上がることとなった。